Grim Saga Project

011 B05 交わっても混ざらない

 
 
 
ラムはまったく疲れた様子を見せず、4時間近く運転した。
途中一度サービスエリアに立ち寄ったけれど、普段の街とは違って独特の空気感が新鮮だ。
夜だったから屋台のお店はほとんど閉まっていたけれど。
 
見慣れぬ地名のインターチェンジを降りてコンビニで休憩しつつ、僕は姉に電話してみた。
4回目のコールで安心する声が出る。
姉はやはり恋人の尚都といるようだが、ファミレスは待ちくたびれて例の研究所まで来ているのだという。
 
無駄足の可能性も十分にあると知りながら、お手洗いを済ませて軽食・飲み物を少し買い込んで、こちらも向かうことにした。
ナビに頼りつつ暗い田舎道を進み、更に15分ぐらい走ると目的地に到着したようだ。
都内とは違い、全体的に土地が広い。
コンビニの駐車場ですら広くて、この研究所は一層広い。
建物の入口前一帯が駐車場になっていて、こんな時間だけど、20台以上は車が停められていて、それらは入口に近い場所にまとまっているのが人間らしさを醸し出す。
 
夜は冷える。
少し他の車と離れて停まる小さな外車を見つけて、ラムがその隣につけた。
二度切り返した辺りに、妙な女性っぽさを感じた気がしたけれど、偏見かもしれないので何も言わない。
助手席の凛が窓を開けると、左側の外車のドアが開いて尚都が出て来た。
わずかに遅れてその助手席側から姉の梨紗も降りてくる。
僕たちも車を降りた。
 
外人ばりというか、梨紗がタタッと駆け寄ってきてラム、凛とそれぞれ軽くハグして一言ずつ声を掛ける。
僕の前にも来て軽く手を広げたけれど、なんだか照れるし、凛も気になってスルーした。
あら、瞬、なんか今頃思春期かぁ、寂しいなー、と一言。
たしかに以前の僕は、姉がいつも助けてくれる際、されるがままだった。
 
さて、役者は揃った、と評して良いのやら、これまでのユメカゴを思い返すなら、役者は揃わない、とするのが適切か。
梨紗が、籠様は?と尋ねる。
ラムが小さくかぶりを振る。
 
 
 
「じゃああの子からの伝言その1ね。今回は私が行くとジャガーが帰れなくなっちゃいそうだから、私は遠くから力を貸すね、だって。」
 
「その伝言いくつあるの?」
 
「全部で三つ。」
 
「残りの二つは?」
 
「うん、それは伝えるべき時に伝えなきゃいけないらしくて。今はまだやめとくよ。私も今言っても意味がわからないし。」