Grim Saga Project

008 C02 円環の理

 
 
 
バルミーがアンノウンの背中を撫でながら、ゆっくりと後ろをついて歩いてくる。
水谷所長と堤と呼ばれた所員は、入口の近くにある普段使いとは異なる、建物のやや奥まったところにあるエレベーターに乗ったので後に続く。
研究所は二階建てで、結構広い。
間取りなどに詳しくないのでよくわからないが、ワンフロアを見ても一世帯の居住空間の比ではなく、50世帯ぐらいは余裕で住めそうな印象。
 
B2の表示。
つまり地下二階でエレベーターの扉が開いた。
まるで未来のハイテク秘密基地とでも表現したら良いか。
地上の造りと異なり、デジタルなあしらいが多くまるで壁の一つをとってもそれがコンピュータなのではないかと思わせる。
 
どこが部屋なのかもわからないし、扉や入口も見当たらない、ただの通路を進む。
両脇に張り巡らされたシルバーの壁、そこに不規則に描かれた幾何学的かつ直線と直角方向転換だけの組み合わせの模様。
どこに印があったのかと思う場所で前を行く二人が立ち止まったが、壁にだけ注目してしまっていただけで明らかな目印となる、地面から突き出る台状の突起物があった。
 
目立ったボタンや模様などは何もないように見受けられたが、水谷所長が台状突起物の天板部に手の平を当てると、壁に切れ目が浮かび上がる。
シュッと薄い音が微かにして、壁から縦長の長方形が消えた。
つまりドアが開いた、ということのようだ。
中に進む二人に続く。
 
中も似たような雰囲気に整えられているが、左右は部屋になっている。
通路と部屋の区切りは一枚透明なガラスで一部がすりガラス。
右の部屋は広く、何をやっているかはわからないが、かなりの大人数で作業している。
多くが白衣を纏っていた。
対して左の部屋はこじんまりとした暗い雰囲気で二人しかいない。
小さなデスクを挟んで向かい合った白衣の二人の男女が、俯き加減で会話をしながら作業している様子。
 
彼が私の息子、水谷未来だよ、という声が小さく響いた。