007 C01 軌道周期フープ
「生きているよ。未来は。」
やっぱりな、って気持ちになった。
だが隣のアンノウンはそれどころじゃない規模のやっぱりな、だ。
一秒、二秒は堪えていたが、みるみるうちに両眼から涙が溢れ出し、顔を押さえて崩れ落ちた。
嗚咽が漏れる。
「おそろしいね、君たち。どんな器のどんな能力を持っているかもわからなければ、おとなしく従っておかないと危ない。」
「わかっていただいたみたいで良かった。で、未来氏はどちらに?」
「ふう。仕方がない。ここだ。わかっていたから来たんだろう?この研究所の地下にいる。研究者として働いている。自らの意思でね。」
「ダウトだな。ウソはついていないんだろうが、その意思とやらには外部からの操作が加わっていると見える。」
「はは。それは私の知るところではない。」
「知るところではない?彼を連れてきて囲っていることは間違いないのに。」
「不思議な能力だな。何をどう見ているか知らないが。」
「手の内を明かすつもりはねぇよ。器の話も真実に近づくために話したに過ぎない。」
「水谷所長、私たちが彼と会うことはできるんですか?」
「さすがにそれは控えてもらおう。今は当所の非常に重要な研究の成否を左右するようなタイミングでね。そこまで阻害される道理はない。」
「5分会うことが研究の阻害になると?」
「彼だけでなく私の時間もこうして予定なく奪うことが研究を阻害しないと思っているのであれば、もう少し社会勉強をすべきだと思うけれど。」
「わかった。じゃあ今回は対話は断念するとして、一目確認したい。亡くなったことにまでして隠してた人間が、実はここにいます、と言われて、はい、そうですか、って納得もできない。犯罪だぜ?いかに息子とはいえ、人一人の死亡を偽装しちまったら。」