005 B02 血湧き肉踊る乱舞
私が先についてしまったようだ。
まだ瞬はいない。
外から軽く店内を覗いたが、それらしい人はいなかった。
フランチャイズではない小さな個人店で、まあまあの客足。
だが並ぶほどではない、といった様子。
まだ時間も早いので、賑わっているほうか。
中に入るのも気が引けて、外のベンチに腰掛けた。
15分も待った頃、瞬が小走りにやってきた。
開口一番、遅れてごめん、と。
15分とはいえ、瞬の性格上、なんらかのイレギュラーがあったはずだ、と考える。
大丈夫?お店入っちゃって平気?と尋ねた。
頷く瞬と店内へ。
あとから人が来るので、三人以上座れる席がいいんですが…、と瞬が伝えるのを聞いて、イレギュラーが電話であったことを察する。
彼が私に相談もなく、食事の席に人を招くというのは相当なことだ。
そして、おそらく後から来る誰かは私の知っている人。
さすがに初対面でこういう会わせ方はしない。
少し楽しみになってきた。
一番可能性が高いのは、瞬の姉、梨紗だろうか。
言い方からして来るのは一人だ。
二人来るなら四人以上座れる席を、と伝える。
その繋がりで考えれば、尚都という線もある気がする。
梨紗と尚都なら二人な気もするから違うかも。
美愛にも会いたいな。
四人掛けの席に通され腰掛ける。
テーブルセッティングは三人分。
「ごめん、凛。待たせちゃって。それで後から来る人…」
「待って待って。なんかあったんだろうから全然いいよ。誰が来るか当てたい!」
「ああ、もちろん凛の知ってる人だよ。」
「んー、でも限られるもんね。そうだなぁ、それじゃあ意外なところで鷲尾さん!」
「ぶっぶー。それは確かに意外だね。」
「真白さん!」
「あ、いや、ハズレ。」
「あはは。じゃあわかっちゃった。」
およそステーキハウスに似つかわしくない妖艶な美女が店に入ってきた。
ドアについたベルがカランコロンと音を立てたが、そのポップな感じと妙にミスマッチ。
やあ、凛、瞬!
とこちらを振り向き一声発したのはラムだった。