004 B01 空虚とはいえ無駄ではない
少しずつ元気になっている。
そんな自覚だった。
自分を信じてくれる人がいることを素直に認め、受け容れることがこんなにも支えになるものなんだなとも思う。
瞬といることが苦ではなくなってきた。
元々瞬がイヤなわけではなく、自分が彼を苦しめる想像が絶えず苦しくなってしまうことが、初期はずっとだった。
こんな自分が誰かと一緒にいてはいけない。
いつか彼を不幸にしてしまう。
そんな気持ちも少しずつ薄れたり、そうなったとしてもどうにかできる希望を持つことができるようになってきた、ということだ。
これが良いことなのか悪いことなのかはもはやわからないので、甘えることを受け容れることにした。
一緒にいることが自然になってきた。
相変わらず彼は忙しそうだ。
それでも私との時間を作ってくれている。
そんなことしなくていいのに、そんな価値なんてないのに、むしろ迷惑ぐらいにまで思っていたのが嘘のように、今は嬉しく感じている自分がいるのがわかる。
ああ、私は彼に好意を寄せているんだな、と自覚していて、その感情に身を委ねる。
もちろんこわい。
暴走するもう一人の自分もこわいし、委ねてしまってうまくいかなくなってしまった時のこともこわい。
そんなことを言って目を背け続けることは、やはり私のエゴだし、真摯に向き合ってくれている彼に失礼だとも思うので、私も少しずつでも前に進もうという気持ちが出てきた。
大学での講義と調べものを終えたら夕方になってしまったから、外で一緒に夕飯にしないか、と連絡が来た。
私はさっき数日分の食材を買ってきて、今夜はどうしようかと考えていたところだ。
まだ準備を始めていなかったし、瞬はそういう時間であることを踏まえて外食の提案をしてきたこともわかる。
そういう人だ。
ついでに私も出掛けて帰ってきたばかりだったから、すぐにまた出られる。
メッセージの受信から30秒後には"どこにする?"と返信していた。
二人で住む家から歩いて15分ほどのところに、ずっと気になっているステーキハウスがある。
そこに行ってみようということになった。
お金の心配をしたが、大丈夫だそうだ。