Grim Saga Project

003 A03 霹靂インパクト

 
 
 
思わぬ収穫のようにも思えたし、まったくなんの関係もない偶然の出来事に遭遇した印象もなくはない。
同級生に会っていたからなんなのか。
とはいえ、唐突な遠出にノープランデート。
志田樹の旧友との再会後、さらに彼を追い掛ける気にはなれなかった。
 
 
 
「水谷科学研究所ってどんなことしてるとこ?」
 
「んー、私も今ネットで見てるだけだから全然大した情報ではないけど、科学業界では比較的名のある研究所みたいだよ。数々の研究の結果とか論文が世界レベルで取り沙汰されたりしてるし。ちょっとゴシップっぽい話だと、エース研究者の松浪未久って女性がいたようだけど、その人がさっきの水谷夕心氏と結婚したんだって。」
 
「いた?」
 
「うん。亡くなってる。」
 
「へえ…。」
 
 
 
一瞬、"懺悔"というワードが頭をよぎる。
 
 
 
「具体的にはどんな研究内容なのかって情報も載ってる?」
 
「うん。論文とか英語のが多そうだから、全体把握したわけじゃないけど、読めそうなキーワードで言えば超伝導とか素粒子とか。頭が良い人が集まってるんだろうなあ。」
 
「まあそうだろうね。今の研究とか論文って松浪未久が手掛けたもの?」
 
「興味あるの?」
 
「あるかないかっつったらあるけど、そうじゃなくてさ、そのエース松浪の生前と没後でどんな変化や影響があったのかなって。」
 
「んー、そこまでは読み解けてないかな。」
 
「うん。悪い悪い。大丈夫、ありがとう。」
 
「ポテト食べる?」
 
「ああ。なんかカーチェイス終了だし、もう少しのんびりするか。食べよ。」
 
「帰りは少し気楽だよね。私運転するよ。」
 
「いや、いいよ。梨紗は寝てな。」
 
「たまには運転しないとできなくなっちゃいそうだから、尚都は助手席ね!」
 
「む。そうかあ。結構あるぜ、距離。」
 
「まあ、疲れるようならどっかで代わってよ。」
 
「うん。あ、電話…、珍しいな。はい、もしもし、ジャガーか。うん。うん。…は?マジ?ほえー…そりゃまた奇遇ですなあ。まあまあ、了解したよ。つーか、うーん、まあいいや。とにかく気をつけて。」
 
「ジャガー?」
 
「梨紗は会ったことなかったよな。嘉陵寺の事件以来姿を消してたし。ウチらの一員。」
 
「うん。聞いてはいた。で、そのジャガーが突然どうしたって?」
 
「梨紗、ドライブは中止だ。」