06 そして?
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さて、私は彼と出会う前から、彼と出会ったらどうしようか、考えていた。
大事な友人の器が、初めて私に問い掛けて来たのが、彼の話だった。
私は愛しい兄を失い、一時半狂乱というか、半分死んだような状態であった。
その兄の失踪に関係する男がこの街にやってくると言う。
ついにまったく何もなかった手掛かりを手に入れたという思いもあれば、恐ろしさもある。
私はどうすればいいかわからないほどに混乱した。
器はそれも見越していたのだろう。
彼が訪れるまでにだいぶ時間に余裕を持って声を掛けてくれた。
だから、どうするか考える時間をじっくり取ることができた。
一つ難しいのは、彼が兄の失踪に関わりがあるというだけで、直接手をくだした人間ではない、という情報だった。
加担する側にいたのか、兄を守る側にいたのかすらわからないそうだ。
まずは見極めなければならない。
この男が兄にとってどういう立ち位置の人間だったのか。
もっと彼のことを知らなければならない。
そして必ず兄の行方を知らなければならない。
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「器のことを知りたいんでしょう?ゼロ、ついて来なさい。」