04 本当に使えないのか?
オレは、…あの人の役に立てるのか?
「ふふ。面白い。きっとそれ、ホントに一番聞きたいことなのね。私にはわからないけど、きっと立てるわ。自分を取り戻せば、ね。」
聞いてから色々考えた。
本気で一番聞きたいことを考えたから、今一番聞きたいことを口にしたと思う。
しかし、そんなことはミチの解答通り、彼女にわかるわけがない。
それでも彼女は大丈夫だと答えた。
自分を取り戻せば。
自分を取り戻す、とはなんだろう。
自信を取り戻す?
能力を取り戻す?
別の何か?
または、それらをひっくるめた全部。
いずれにせよ、オレは何かを欠落させてしまったのだ。
元に戻るというよりは、ある意味生まれ変わった新しい自分になる必要がある。
とにかく、器に関する情報を得て、わからないことを少しずつ埋めていこうとするアプローチは、やはりステップとしては踏むべきだとは思う。
だから、助言はありがとう。
一旦器の話に戻りたい。
ミチの知る器のことを教えてくれないか?
「ふむ。まず、私が実際に知るグリムの器は、私ではなく私の友人が所持していた。だから、私の実感として知っているというよりは又聞き程度。グリムという一族が遥か昔にいたそうで、その血族が打つ無機物には命を宿すということだと聞く。既知の、私たちが知る命、人間のみならず様々、動植物などの生き物とどう異なる生命体なのかはわからないが、とにかくモノが命を持つのだという。だからゼロの持つ、おそらくその指輪と腕輪の繋がった不思議なアクセサリも命を宿しているんだ。グリムの器は自らの意思をも持ち、考え、時には所持者との対話も可能だという。そして、器の所持者はマスタと呼称し、常人とは異なる能力を扱うことができるようになる。」
またこう何か、違うミチが顔を覗かせた気がするようなモードだ。
いや、しかし。
なるほど。
ありがとう。
ということは、こいつが本当にグリムの器なのであれば、こいつにも命が宿っていて、しかも心まで持ってる、ってことか。
残念ながら、今のところオレはその命や心を体感できていない。
そうそう、もう一つだけオレが知ってる情報があった。
こいつがおそらくグリムの器だということ以外に、こいつは約定天鎖という呼び名だということ。
つまり名前か。
しかし、なぜ約定天鎖という名なのか、そいつをどこで知ったのか、なぜこの約定天鎖がグリムの器だと信じているのかすらあまりわかっていない。
主君と信じた姫君との会話から、勝手に自分がそう決めつけていただけなのだとも思ったが、約定天鎖という名を具体的に聞いたわけでもなく、それ以前から知っていたようにも思う。
なぜだろう。
「あのね、ゼロ。器の名を知る、というのは貴方が認識している以上にとても重要なことよ。マスタはまず器と何らかのコミュニケーションができるようになることが必要だし、その結果器自体から名を聞くことができるというのは、器に認められた証とも取れるの。だから、おそらくその名を貴方が知っているのは、無自覚かもしれないけど、その器が貴方を認めていて、きっと器から伝達されているからなのだと私は思う。」
本当にそうか?
じゃあなぜオレは能力を、サイコメトリを使えなくなった?
器から見放されたのか?
どこかで何かを間違えたのか?
「本当に使えないの?サイコメトリ。」
え?
どういうことだ。
「もう少しその、貴方が失意に陥った時のことを詳しく伺うことは可能かしら?」