Grim Saga Project

03 素直じゃないのか?

 
 
 
なにがなんだかまったくわからない。
会話が噛み合わない。
待て、落ち着け。
ミチの言うことの意味はたしかにわからないが、会話が噛み合わない理由の一つはたしかにオレ自身にある。
彼女の問い掛けに答えていない。
 
オレはどん底を味わった。
今だってまだその延長線上にいるじゃないか。
手伝ってくれるのであれば、それはそれでありがたい話だ。
口が悪いのは、そしてまるで二重人格であるかのような言動は、とりあえず二の次。
優先順位が低いと考えて無視しよう。
 
頼む。
探し物を見つける手伝いをしてほしい。
 
 
 
「オッケ。まったく素直じゃないな。それでアンタが探してるその金持ちってウチなんでしょ?こんなど田舎でそこそこの富豪なんてウチぐらいだもの。なにが知りたいのか、言ってみな。」
 
 
 
なんつー口の悪さだ。
いや、まさに今それは不問だと決めたはずだ。
いいから話を進めるべきだ。
 
もう一つサンドイッチをいただいてもいいかな。
頭を使ったら腹が減った。
 
ああ、そんじゃありがたくいただく。
察してんのかも知れないが、オレの持ち物の中でとびきりのお気に入りがあって、それについて詳しく知りたいんだ。
その出どころと、ミチの家系のコレクションに関係があるんじゃないかと睨んでる。
心当たりはあるかい?
 
 
 
「あら、急にまとも。うん、正直ね、そんなんじゃないかって思った。その話を聞く前から私はグリムの器を知っているから。」
 
 
 
まさか。
こんなど田舎で、こんなに簡単に知りたい情報を持っている人間と接触できるとは。
そう、その通りだ。
オレはグリムの器について、もっと知りたい。
というより、今はまだ何も知らないに等しい。

そもそもグリムの器ってのはなんなんだ。
そんなにたくさんあるもんなのか?
そんなに名の通ったもんなのか?
オレの器のことを詳しく知ってるのか?
 
ああ、いや、悪い。
ちょっと事を急いた。
 
 
 
「んー、っていうか、アンタさ、這い上がりたいのよね。それ知ったとこでなんでそれが前向きになるきっかけになるのかしら?そこが全然繋がらないのよ。言ってることの矛盾、理解してる?」
 
 
 
…。
その通り過ぎる。
言葉にも思考にも詰まったが、この問いはある種の核心で、逃避的な心理を直撃したのではないかと思う。
 
心を折られた事件の中で、オレはサイコメトリが使えなくなった。
選ばれし自分の能力だと思っていたが、あいつらみんな何らかの能力者で、その力の根源がグリムの器だという話らしい。
そこまでは理解できたが、つまりそれしかわからない。
グリムの器というのが何なのかさっぱりわからない。
おそらく、それぞれ異なるのだろうと思ったが確認する術も知らないので、サイコメトリを使えると気付いた辺りから身につけているものを考えた時に、このブレスレットと指輪を鎖で繋いだアクセサリが思い浮かんだのだ。
 
どうして、オレはあんな大事な局面で能力を使えなかったのだろう。
それを知るためには、まずグリムの器について知らなくてはならないと考えた。
器のことを知ることができれば、もっと他にも色々とわかることがあるかもしれない。
しかしだ、前向きになるというか、自分を取り戻すというか、ここから先に一歩進むために知る必要がある、というだけで、知ったところでどうするかという問題はある。
あるが、知ってみないとどうしようもないと思うんだ。
 
このアクセサリがグリムの器なのか。
なぜオレは能力を使えなくなってしまったのだろうか。
ミチは元々グリムの器を知っているのはどうしてなんだ。
コレクションの中にあったのか?
 
 
 
「まあた質問攻め?懲りないわね…。頭の中がまとまってのはよくわかった。とりあえず素直になりなさい。で、一番聞きたいことはなあに?」
 
 
 
一番聞きたいこと、か。
なんだろ。