00 プロローグ
焦燥。絶望。失意。無力。虚無。
人生で積み重ねた無駄な自信の数々が打ち砕かれた。
生涯の主君から、それでも戻ってくることを信じていると言われては完全に折れて拗ねている場合でもない。
快晴である。
空は澄んでいるが、気温はくだり調子。
秋に差し掛かった辺りだろう。
格好をつけて放浪の旅と行きたかったが、待っている誰かがいるのにアテなき時間を過ごすわけにも行かず、微かな望みを持っていくつかの土地を彷徨っている。
そんな微妙な、ある種変わらず半端なオレを一旦しばしこの地に繫ぎ止めるきっかけがあった。
そのひとつは、向かいから歩いてくる女性である。
「ハァイ、ゼロ。今日もクソみたいに死んだ魚みたいな目ぇしてんね、アンタ。サンドイッチでもいかが?」
およそ食事に誘っているとは思えない口ぶりだ。
しかし、これは彼女の流儀のようである。
相変わらずとも言える。
彼女はミチという。
オレがゼロなら、アンタはロードかい?と聞いたら、いいえ、私はアンノウンよ、と答えた。
なるほど。
こいつは手強い。
出会って三日目。
この謎の女性、ミチがこの地でオレが探し求めている情報の片鱗を持っているかもしれない。