Grim Saga Project

幸福キャンパス 067

 
 
 
「ありがとう。それじゃあ僕から話したかったことを一つ。手術をする以外の方法で器を取り出せる可能性がある。」

「どういうことですか?」

「知っての通り、グリムの器には不思議な力がある。それを利用すればできるかもしれない。」

「本当ですか!どうやって!?」

「うん。君の体内にねむる器の力を使うわけではないんだ。知ってのとおり、僕やその周囲の何人かはまた別の器の力を持つ。そのいくつかを組み合わせることで、そして他にもいくつかの条件が重なることで、おそらくできる。いくつか検証が必要だけどね。それには協力してもらわなければいけない。」

「回りくどいですね。端的に教えていただくことはできませんか?」

「うーん、見せた方が早いかなって。説明はそれと合わせての方がいいと思うんだ。」

「なるほど。そういうことであれば僕はいつでも。最優先で予定も空けます。」

「わかった。それじゃあ検証と確認を今夜、それ次第で実施を考える、というのはどうだろう?」

「わかりました。ありがとうございます。仰っていたいくつかの条件が整うかどうかを今夜検証する、ってことですね。」



その夜、必要な人間が集結。
最終的被験体のユウキ、テレポート担当のミア、体内ビジョン確認担当の僕、ビジョン共有担当の姉リサとナオト、そして今回の試験的被験体としてリン。
小さな丸い飴玉にマジックで印を書いて、リンがそれを飲み込む。
そして、僕がビジョンを確認。
体内を覗くことの承諾を得るという意味ではリンに頼むのが最適解だった。
一度体内に入れたものを取り出すなんて、女性には気持ちの良いものではないと思いながら、リンはこの役割を率先して引き受けた。
詳しい説明は省きつつ、とにかく僕と姉、ナオトがミアに情報を伝達して、最後に30cmだけミアがリンの手を取り共にテレポートして見せた。
直後に、元々リンがいた場所から印のついた飴玉が床に落ちる。



「なんてことだ…。たしかに体内から物質を取り出した。」

「うん。こういうことだ。このメンバーを揃えないとできない。そしてもう一つ、ミアが一緒にテレポートできる人間は、彼女自身が一緒にテレポートしたいと思って、一定の親近感を持っていないとできないことがわかっている。それはこの後試そう。今できなければ、少し行動を共にしたり、会話をすれば大丈夫。それは検証済みだから。どうかな?」

「いや、…なんというか、…驚きました。こんなことが可能だなんて。」

「いやあ、実はウチらもこんなんできると思わなくってね。かなりこのために検証したり、ウチの能力もだいぶ鍛える必要があったもんで、ちょっと時間掛かっちゃったんだけど。」

「ということはみなさんこのために、準備してくださったということですか。」

「うん。もちろん。ここまでできて、初めて提案できるかなと思ったしね。それに、ほかにも実施に向けては準備がいると考えているよ。まずは、やはり場所は病院がいい。」

「どうしてですか?」

「器を取り出せたとして、君の健康状態を損ねない保証がないからだ。」

「そこまで考えてくださっているんですね。」

「ユウキが自分で言っていただろ?僕も結果的に君の命に関わるようなことになったら困る。一応テレポートの実施時には麻酔をかけてもらって、もし異常が起きたら元に戻すことも考えてる。そして、可能であればもう一つ。できれば、事前に器と会話がしたい。」