幸福キャンパス 066
そうと決まれば、作戦決行の前段として必要なユウキの気持ち確認をしよう。
ミアにも姉にもナオトにもそう話した。
リンはこれでスッキリと納得のいく形になるだろうか。
なにせ、リンはその会話は僕に任せるという。
関係性上、たしかにそれが一番自然だと思うけれど、なんならリンが話した方がうまくいくかもな、とちょっと考えていた気持ちを見透かされたようでもあった。
「先輩、話って?」
「もちろん、器のことだよ。」
「やっぱりマスタである先輩が手にしたくなりました?」
「んー、そういう解釈でも構わないかな。」
「ん?というと?」
「僕からも話したいことがもちろんあるんだけど、君の話を聞きたいってのもあって。」
「僕の話って、もう話し尽くしたような気がしますよ。」
「いやあ、そんなことはないよ。あれから色々考えたんだ。やっぱり器を手にしてみたい、ってのも含めて。だから具体的にユウキの望みも僕の思いも叶えるために何ができるのか、についてもう少し聞きたくて。」
「抽象的ですね。要は?」
「その器を取り出すとしたら手術をしようと考えている?」
「ええ、もちろんそうです。」
「その場合は、やはり志田病院で手術をするのかい?」
「色々考えています。万全で臨むために、今のところ検査はうちの病院で受けています。でももっと設備の整っている大病院の方が確度が高いのかどうか、とかは考えてますね。」
「なるほど。ホントにやるつもりだということはわかった。実際いつ頃ってメドはあるの?」
「もう正直やることについては意思が固いので、なるはやですね。調べられるだけ調べたら、最適な場所で受けようと思っています。」
「そもそもその器が埋まったきっかけになった執刀はお父さんがやったんだったよね。一度切開をした医師が再度実施した方が、とかはないのかな?」
「うーん。どうなんでしょう。実際うちでやるかどうかについても、ぶっちゃけ確認が難しいんですよ。祖父はもう病院を離れているし、父とは色々ありまして。あとはここまで詳細に状況を知っている人間がいないから、軽々しくは聞けません。」
「色々か…。でも志田病院でやるかどうかは、少なくとも状況を知っているお父さんに判断を仰がないとわからないようにも思えるね。もし良かったらその事情も話せる範囲で聞けないかな。可能なら力添えする。」
「いえ、まあさすがにこれは家族の話ですし、お力添えいただくような話ではないですよ。」
「実はね、君のお父さん、志田樹さんの噂を聞いた。面白くはないだろうからすまないけど、不貞な話だよ。」
「なんか調べました?」
「うーん、わざわざというよりは偶然耳に入ってきただけなんだけどね。申し訳ない。」
「いえいえ、それなら話が早いと言えば早いのですが、以前にもお伝えした通り、父には祖父ほどの才がなかったことに端を発する。今は院長をしていますが、医師として云々よりは、何かこう別の、うーん、なんていうのかな、政治家のような?忙しく飛び回っているようなんです。家には帰らず、色んな女性とも関係が、とか色々な話を聞きますがよくわからず。つまり、手術の話を聞こうにも会えないんですよ、父親であるにも関わらず。」