Grim Saga Project

幸福キャンパス 065

 
 
 
一度、気持ちをリセットしたいと思う。
ミアを中心に、ユウキの器を取り出すことを目的としてこの一ヶ月結束していた。
だから、リンの複雑な心情を蔑ろにしてしまっていたのではないだろうか。
リンの気持ちはまっすぐだ。
それを踏みにじってこのまま進んではいけない、という思いが加速度的に大きくなった。

見ないことにしていた、ユウキの器を取り出す以外の要素に改めて目を向けたい。
例えば志田樹。
ユウキの父にして、現志田病院院長でもあるこの男の行動は意味がわからない。
ナオトの調査対象である組織となんらか関わっているであろうことは間違いないように思える。
火のないところに煙は立たないが、彼の周りにはいくつもの煙が立ち上っていると感じる。

しかし、器取り出し作戦に舵を切った理由である、これ以上踏み込む余地がない状態であることもまた事実。
どうすればいいだろう。
ここは素直にリンと相談しようと決めた。



「だから、器を取り出すにしてもそうでないにしても、リンが納得のいく形にしたい。どうしたらいいかな。」

「シュン、ありがと。私もどうしたらいいかはわかんないんだけど、一つだけやりたいことがある。というか、いずれにせよやらなければいけないこと、かな。」

「なに?」

「うん。ユウキと話す。」

「ん?なにを?」

「ある程度全部。だって、ユウキ自身が器を取り除きたいと思ってるっていっても、今私たちがやろうとしている方法を伝えてどう思うか聞くステップは絶対必要だよね。それにお父様、志田樹さんのことだって、彼の口からはどう語られるのか確認できるよね、言い方考えなきゃだけど。」

「…たしかに。その通りだ。言い方か。どう聞けばいいだろう。君のお父さんの悪い噂を聞いたよ、とか。いや、変か。」

「うーん、もしユウキが普通に器を取り出すことを考えたら、やっぱり手術をすることになるはずだよね。その場合って、彼自身が話してた通り、またお父様が執刀するのかな。今は志田病院の院長さんだから、そういうことはできないのかな。そんな話から切り出してみたらどうだろ。」

「リンやっぱめちゃくちゃ頭いいな…。」

「なんだよぅ、改まって…。」