幸福キャンパス 063
やるなら次に何が必要か、ということで姉の言葉通り、検証を行うことにした。
ミアの能力の検証だ。
もちろんおいしい食事とある程度のアルコールをいただきながら、満場一致でやってみようと決めたわけだ。
最終的には満場一致だが、リンだけギリギリまで難しい顔をしていた。
この理由についてはあとでもう少し詳しく聞かなければ、と思う。
さて、検証というのは実際に先ほどの姉の突飛な発想から生まれた作戦の成功率がゼロパーセントじゃないことを、である。
どうやるか。
試す。
とにかく、ユウキと同じ状況はまずないので、なるべく近い状態をたくさん作って試す。
ミアの体力と気力が許す限り、なるべくたくさんの検証が効率的に行えるように、様々なケーススタディを用意した。
結果の仮定も含めて、わずかな条件の違いでやれることがいくらでもあることが、やはり姉の発想からわかる。
ミアも驚いていたのだが、たしかに色々試せる。
例えば、団子程度の大きさの石ころを手に持つ。
まずはミアの手に持つ。
50cm程度の近距離を移動してみると、手に持った石は一緒にテレポートした。
ミアと手を繋いだリンが手に持った状態だと、リンも石も一緒にテレポートした。
それではその石を地面に置いて、かがんで指先で触れた状態だとどうか。
テレポートしなかった。
片方の靴を脱いで、その地面の石を足の指で掴むようにしたらどうか。
テレポートしなかった。
しかし、足の指で掴むのが脱いだ靴だと移動したのだ。
こんなに簡単な試行で、姉の言う通り、おそらくミアの意識次第でテレポート対象が変わる可能性があるのではないかと思える。
大きさだけで言えば、石より靴の方が直径があるのに、石は移動せず靴は移動した。
意識の差異からこの結果が生まれたと思いたいが、姉はまだまだ検証不足だと言う。
大きさだけでなく、その素材や硬度または重量の違いによるものの可能性があるではないか、と。
たしかに。
そして、何日か色々試した中で、意識に影響する可能性を証明する結果を得たのだ。
ミアには実験に使った石を試験期間中ずっと持っていてもらった。
それだけで愛着がわく。
初日に試した、地面に置いた石を足の指で掴む実験を再度行った結果が変わったのだ。
一緒に移動した。
もちろんかがんで指先で触れている場合も同様だった。
さらにユウキの状況と似た環境を作るために、アメ玉を舐めながらテレポートする実験を行う。
当然一緒にテレポートしたわけだが、それを小石にしてみても移動する。
愛着が湧いていないはずであるにもかかわらず、だ。
そこから、意識を変えて何度も試す。
その石はミアにとって、まったく大切ではないものだ、と考えながらテレポートを繰り返す。
そのうち、口に含んだ石だけテレポートの対象外にすることができたのだ。
アメ玉はしかし成功せず、何度やっても一緒に移動してしまう。