幸福キャンパス 062
まずは照合。
シュン、リン、ミアの周りで起きた事件と私たちの調査で漠然と重なりそうなこと。
一つ、志田家。
志田樹林、息子の志田樹、さらにその息子のユウキこと志田結樹。
それぞれに関わり方は違うけど十分共通項にはなると思う。
一つ、謎の組織。
こちらの方がさらに曖昧で、ユキとサオリの組織と、ナオトが調べている組織が、同一のものかどうかすらわからない。
大きくはこの二点だよね。
ということは、自ずから切り込むなら志田家からになると思う。
そこでもう一つ。
ユウキのことを詳しく思い出す。
マスタではない器の保持者で、そのマスタはシュンである可能性が高い。
ユウキは器のない自分になってみたい。
シュンとの接触後、器に変わった反応はなし。
ユウキ自身の、おそらく志田病院での検査によると、心臓の状況はおおむね良好。
器なしでも十分機能するのではないか、という診断だったはず。
それならさ、器を取り出してあげたらどうかと思って。
はあ?って顔してるね、よしよし。
ここからがミアが最大限に重要な立ち位置になっちゃう理由。
もう想像ついた?
テレポート。
器だけ瞬間移動の対象、というか器以外、つまりユウキだけをテレポートさせて器を対象外にできないかな。
ミアの能力ってさ、自分または触れている誰かと身につけているもの一式が同時に移動できるよね。
それってどうやってるの?
うんうん。
色々試した結果、触れているものすべてが移動するわけじゃないのね。
壁とかに触れていても移動の対象にならなかった。
家具とかもなのね。
で、例えばバッグとか簡単な手荷物は移動するんだよね、一緒に。
これってどういうことなんだろ。
多分なんだけど。
ミアの意識に大きく影響してるんだと思うんだ。
移動するタイミングで、その人と一緒に移動するのに差し障りのないもの、またはその人と一体であるようなものは同時に移動する。
服なんかもそうだよね。
だから、ユウキとその心臓に埋められた器がもう一心同体でないことを強く意識できたらどうかな。
これを成功させるために、器の能力をフル活用してみたらどうかと思う。
まずね、シュンにはユウキの体内、つまり心臓を見てもらう。
実際の器と心臓の状態を知っておかないと、この作戦はうまくいかないと思うんだ。
次に私たちの指輪に動いてもらう。
最近もう少しずつ私もナオトも指輪との距離を近づけられてるようにも感じるし、きっと協力してくれる。
その、シュンの見た映像をミアに共有する。
もしかしたら指輪の力の媒介として、私とナオトがイメージの仲介をしてもいい。
とにかく、シュンの見た映像がそのまま実際の状況、癒着の状態とかのはずだし、それをミアが見られたらだいぶイメージできるんじゃないかなって。
どうかな。
やってみる価値あるかと思った。