Grim Saga Project

幸福キャンパス 060

 
 
 
たしかにサーブされた食前酒も、その後運ばれてきた料理のどれもおいしい。
雑談をしながら、食器の使い方に手間取りつつも、和やかかつ楽しい時間が流れる。



「掘り返すようで悪いんだけど、私たちもね、実はあなたたちが今回巻き込まれた事件とちょっと関係することを調べてたのよ、元々。」

「え?事件って、例のあの事件?」

「そう。」

「だってあれは完全に僕らの大学内の話だよ。」

「ところがどっこい、ってな。そうでもない。とはいえ、リサとも話したんだけどさ、この話自体がシュンたちにとっちゃまったく面白くない事件だった。あえて言うが先輩が二人亡くなり、後輩が二人捕まり、だ。もうごめんだ、ってことなら俺もリサも特にこの話はしない。」

「リン、ミア、どう?」

「私は大丈夫。特に問題ない。」

「ウチもー。シュンでしょ、一番大変だったの。」

「そんなこともないと思うけど、僕も平気だよ。なんとなく少しずつ薄らいでは来ていたんだけど、むしろまだ色々解決してないもやもやがそのままってのもある。」

「わかった。それじゃあそのまま食べたり飲んだりしながら行きましょ。実は私とナオトが調べていたこと自体もそもそもは別だったの。」

「そう。俺はある組織について。まだ調査続行中なので詳しくは話せないんだが。」

「てことは、姉さんの調査はひと段落してるってことか。」

「うん、まあそうね。あまり納得はいってないけど。これは依頼者から話しても構わない、ってむしろ先に言われてるから、あなたたちになら。」

「鷲尾さんですね。」

「そういうこと。浮気調査。尾行って初めてした。」

「姉さんが尾行…。」

「で?で?どうだったんです?」

「それがクロ過ぎてホントにクロなのか、よくわからないほど。」

「どういう意味、それ。」

「二週間見てたんだけどね。ほとんど毎日遊びまくってる。仕事もだいぶ融通が利くのか、自由なもので。一日に三人別の女性と会ってたこともあった。少なくとも毎日一人は。不思議なのは、一度も奥さんと会わないこと。そもそも家に帰らない。」

「はあー、お盛んなこと。」

「うん。でもなんていうかさ、ただの浮気じゃない気がするんだ。もちろんそういう関係の相手もいるとは思うんだけど、毎日毎日別の人で、浮気されてるのもわからずに家に泊めてるような印象じゃない。慣れ過ぎてる。それぞれがみんな奥さんみたいに自然なわけ。」

「二週間ずーっと別の人なの?一度も同じ相手と会わないで。」

「えっとね、三回会った人が一人。二回会った人が三人。一度だけが十九人。」

「うわ、すご…!」

「これを報告して、はい、浮気してましたね、おしまい、って言われてもね。」