Grim Saga Project

幸福キャンパス 057

 
 
 
一応平穏が戻ったと観測できる。
HCLは解散した。
サークルに充てていた時間は漏れなくリンと過ごす時間の拡大に…と言いたいところだけど、なんとなくミアやユウカたちと会話する機会もまだある。

事件は終わった。
危機も去った。
最近は戌亥も泉田も来ない。
真白も会っていない。
しかし、なにかこう、もやもやとした状態というか、スッキリしない。
マリオとはケンイチの葬儀以降、連絡も取っていない。

サークル所属前の生活に戻っただけのはずだ。
…と思いたいだけで、やはりまだどうしても考えてしまうのだ。
考えても解決しないと理解しているし、みんなとも色々話したけれど、最近はそれぞれ消化しつつあるように思う。

少しずつ忘れていく。
薄れてゆく。
近しい人が亡くなった衝撃が強かったとはいえ、二人の先輩とはまだそれほどコミュニケーションも取っていなかったし。
徐々に元のタスクに割く時間が増えるし、思考も切り替わる。
学業のこと、器のこと、ユメカゴのこと、リンとのこれから。

一ヶ月も経った頃、僕はまた講義が終わった後の空き教室で一人で調べ物をしていた。
パソコンとにらめっこである。
得意ではないが、だいぶ扱いには慣れてきた。
思わぬ来客があった。



「シュン先輩、お久しぶりです。事件以来ですね。」



ユウキだった。