Grim Saga Project

幸福キャンパス 056

 
 
 




最悪の未来は回避された。
それは間違っていないと思う。
だが、すべてが明らかになったわけでもない。
当面誰かの命が危険に晒されている状態ではなくなったのだから、些末と捉えることもできる。

夕華たちも瞬たちも、望む以上に事件に介入してしまったのだろう。
未だに警察や関係者と話したりしているようだ。
私はそこからは一歩引いていると思う。
そもそもH大生でもHCLの一員でもないから自然なのだけれど。

夕華から逐一その後の報告を受けている。
様々な不明点が残っている。
だからこそ、まだ報告が来る。

悠希と紗織は元から麻薬組織の関係者だったのか?
二人の先輩とはどのようにして繋がったのか?
なぜ和真先輩は殺されたのか。

なんとなく漠然とした不安が残っている。
一旦終わったのだと思う。
しかし完全には終わっていないような、まだ何かがくすぶっているような気持ちの悪さ。

悠希と紗織は元々そういう人間だったとしよう。
そういった価値観に対して、一般的な観念に欠如があるなり、とてもお金に困っているなり、なんらかの事情があったということでも良い。
それならそれで良い。
そうでなかった場合は?

今回の事件に合わせて用意された接触者でありある意味被害者にもなり得るのではないか。
その場合、そうなるように仕組んだ、手配した人間がいる。
先輩たちに麻薬を流すようにした人間がいる、ということになる。
つまり、ある程度事情がわかっていて、さらに二人の先輩の状況が悪化するように仕向けた、ということだ。
鞠雄先輩ならできる。
それ以外にあり得るか?

仮に仕組まれた流れであれば、悠希と紗織が二人の先輩と接触したのも必然ということになる。
そうでなかったとすると、二人の先輩たちが自ら麻薬を欲して繋がったのだろうか。
そんな簡単に同じ大学の中にいる学生の麻薬密売人と繋がることがあるだろうか。
元々それを知っていれば十分あり得るか。
真白という女性が連れてきた刑事の話を鵜呑みにするなら、そもそもそういう話があったわけだが、最近活性化したのはなぜだろう。
どの程度学生間でも周知の話だったのか。

そしてやはり仕組まれた流れであれば、和真先輩が殺された理由についても想像を膨らませることはできる。
あくまでも想像の域は出ないが。
つまり、目的は別にある可能性だ。
こうなった結果、何かを得る人間はいるだろうか。
少なくとも私たち、つまり私以外に夕華、七海、園葉、そして瞬、凛、美愛ではないはずだ。
鞠雄は何か得たのだろうか。
ほかにあり得るとしたら?
亡くなった二人もあり得ないし、捕まった二人も考えづらい。
真白?志田結樹?
…志田結樹はどうだろう?