Grim Saga Project

幸福キャンパス 052

 
 
 
継続も連続もキツイから透視を何度もできない。
しかし、ミアをテレポートさせるなら、少なくともサオリがいなくなってからだ。
ユキのナイフを叩き落とせてもそれで終わりではない。
緊迫したこの状況の中で、僕の知る情報をミアやリンに伝える方法がない。

サオリはもう逃げただろうか。
そうであれば、ミアにテレポートさせるのが最善かもしれない。
もう一度、透視すべきだ。
確認しなくてはならない。

部屋の奥に視線を集中する。
また泉田の背中から徐々に透けていく。
先ほどまでサオリがいたはずの奥の部屋はもぬけの殻になっていた。
キィンと軽い耳鳴り。
左耳がズキッと痛んだ。
両目の奥も痛む。
能力が発動し続けていられなくなる。

ミア、テレポートしてユキのナイフを…、と言おうとした瞬間、後ろから足音が聞こえてきた。
飛び込んできたソウが叫ぶ。



「シュン!左!!」



振り向いた左側に飛び掛かって来る人影。
ミアが背後から僕に抱きついた、と同時に世界が変わる。
テレポートしたのだとすぐにわかった。
目の前にユキとマリオがいたからだ。
咄嗟に助けてくれたミアが、そもそも僕と同じようにユキを無力化することを考えていたから移動した先のイメージに違和感がなかった。

ナイフを持ったユキの右手を背後から手刀で思いっきり叩く。
ユキの手からナイフが落ちて、室内に鈍い金属音が響く。
叩いたユキの右手を両手で思いっきり握ってマリオから引き剥がした。
迷う。
さっき僕に飛び掛かってきたのはサオリだ。
逃げたんじゃなく、一網打尽を狙って別の部屋から僕らの左側に回り込んでいた。

本意ではないが、ユキをそのまま押し倒して動きを封じた。
ようやく顔を上げると、先ほどまで僕がいたところで泉田が同じようにサオリを拘束している光景が飛び込んで来た。