幸福キャンパス 044
つまり、真犯人は別にいる。
僕らはそう結論付けた。
どうしてもここまでの話を聞くに、マリオは麻薬の仕入れ屋ではなく、むしろ犯人に仕立て上げられようとしている、と考えた方が腑に落ちる。
では、その真犯人は誰なのか。
現段階でその結論を出すことはできないし、戌亥と泉田をはじめとする警察の捜査を待つかというと、そんな悠長な時間もない。
さらに言えば、ソウの予言を信じても仕入れ屋と次の事件の加害者は同一とは限らないし、同一だとしてもそれが一人だとは限らない。
そして、被害者側がHCL関係者だというだけの情報しかないわけだから、加害者側は未だ見ぬ誰かかも知れないではないか。
しかしそうか、マリオが犯人に仕立て上げられようとしているとしたら、さすがにその線は薄くなる。
なんせ、今の状態では犯人特定は極めて困難だということだ。
先ほど戌亥からは、お前らめちゃくちゃ危険な立ち位置なんだから余計なことしねぇで大人しく安全にしてろよ、と釘を刺されたばかりだが、そうもいかない。
少なくとも僕はリンだけは確実に信用している。
彼女がもし真犯人だったとしても僕は彼女の味方をする。
唯一他殺が起きたタイミングで一緒にいたミアも信用して良い。
リンとミア以外は信用するとしたらほぼ感情論や印象に依るものになる。
少し離れたところで固まって話していたソウたちの内の二人、ユウカとナナミがこちらに歩み寄る。
「アタシたちは正直まだ貴方たちが信用できるのかどうかわかんない。不安だし心配だしコワイ。だけどソウが認めない。」
「僕たちも似たようなもんだ。カズマ先輩までこんなことになったし、あの場の解散を促した僕はどうしたって疑われる。自分たちが犯人じゃないことを確信できるのは、あの時に一緒にいた人たちだけになってしまうよね。ソウさんはどうしてそれでも僕たちを信じるのかな。」
「そんなのわかんない。でも今離れちゃダメだって。」
「理屈抜き、か。いいね。わかった。じゃあ私、ユウカさんもナナミさんも、もちろんソウさんソノハさん、信じるよ。」
「え、リンさん、そんな簡単でいいの?私たちはまだ疑ってるんだよ?」
「うーん、そうだけど、私たち器のチームは多分大丈夫。根拠なし!私の勘!ね、シュン、ミア、みんな不安だけどユウカさんたちとは協力しなきゃいけない気がするよ。」
「ウチ、リンちゃんがそこまで言うならわかった。もう疑わない!」
「えええ、ミアさんまで?」
「ああ、わかったよ。僕も信じよう。」
「ホントに?私たちまだ信じきれない。」
「でもソウさんは信じてくれてるんでしょ?ユウカさんもナナミさんもソノハさんも、きっと協力してくれる。」
「うー、わかった。わかったよ、もう!器のチームは健在!ってね。」
「さて、じゃあ早速相談。僕たちはマリオ先輩と会おうと思う。一緒に行こう。」