Grim Saga Project

幸福キャンパス 041

 
 
 
リンが左の掌を上向きに差し出すと、ごく自然に弱い炎が立ち上る。
パイロキネシス、炎を操る能力だという説明だけする。
例えばその炎の強さがリンの感情によって大きく異なることなどの詳細は省いた。
こちらとしても情報を出し過ぎたくない、という意図なのだと理解する。

次にミアが、よーく見ててくださいね、と言い残すとフッと消えた。
次の瞬間、戌亥・泉田の両刑事の背後からやっほーと声をかける。
これも詳しくは語らない。
リン、ミアの能力に二人はとても驚いていた。

マシロにこの場を設けてもらった時、僕は迷った末にソウたち4人も連れてきた。
共犯の可能性はゼロではないとはいえ、ここまでの経緯からして、実際彼女たちが犯人だとは思えない。
能力を明かす理由もないし、手を組む必要もなければ、情報共有も不要だ。
もちろんそれでも目的遂行までの間、自分たちが犯人であることから僕らの目を背けるため、とか考え始めるとやはり可能性はゼロではないのだけれど、それでもそうは思えない。

だからこの場にはソウたち4人もいた。
リンとミアの能力を見たのは彼女たちも初めてで、二人の刑事よりオーバーリアクションで驚いていたが、おそらくこれは本心から驚いていたのだと思う。
僕の能力についても説明したが、前の二人に比べると派手さがないので実演もしなかった。
戌亥刑事が隠密捜査だったらこれが一番使えそうだな、と呟いたのが聞こえたので、やはりこの人は只者ではないな、という印象を受けた。

ということで死因が焼死ならリンは疑われたかもしれないが、今回の事件とは関係ないという印象を与えられたと思う。
それでいい。
ミアの能力にしても、カズマの死に場所が密室ともなっていれば話は別だけれど、現場の鍵はかかっていなかった、という新情報が得られた。