幸福キャンパス 037
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誰かが私の前にいる。
私は目を閉じているのに、なぜだかわかるのだ。
しかしそれが誰なのかまではわからない。
手を伸ばせば触れられるような距離にも感じるし、遥か遠くにも感じる。
その誰かは、私が知る誰かでもあり、まったく知らない誰かでもある。
そう感じた瞬間、私の前には二人いるのだと突然確信した。
まったく別の人格である二人が、ゆっくりと重なって一人の人間の形になるイメージが強く沸く。
私は金縛りにあったように動けなかった。
いや、そもそも初めから目も開けられなかったではないか。
一つの身体に二つの心。
二心同体?
いずれにせよ、その人は私の近くにいる。
なぜだか守らなければいけない気がした。
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また?と声が聞こえてハッとした。
白昼夢の世界にいた。
眠っていたわけではない。
引きずりこまれていた、とでも言えばいいだろうか。
夕華はそれをよくわかっているから、驚きはしない。
むしろ今私たちが置かれている状況から考えるに、今私が見たイメージが何なのかを確認しているのだ。
私は意味もわからないまま、ありのままを伝えた。
無意識に、いや、うっすらとわかっていたことだ。
夕華は、その二心同体は結樹だね、とあっさり答えた。
そう、その通り。
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