Grim Saga Project

幸福キャンパス 033

 
 
 
協力を依頼する体で話し始めたはずの僕が黙り込んだものだから、みんな僕が話すのを待っていた。
が、リンはさすがで僕が何をためらっているか理解していたのだろう。



「ここにいる人の大半が知っている話も含んでしまうけれど、ちょっと聞いてね。詳しく話せないというかよくわからない部分もあるんだけど、常識で計れない特別なことが起きているみたいなの。どうやら、このサークルに関わる悪い事件はまだはじまったばかりらしい。ケンイチ先輩が先日自ら命を絶ってしまうという悲しい出来事が起きました。その理由もまだわかっていない。だけど、またその次、さらにその先にもサークル内で命に関わるほどの危機が迫っているようで、どうもその見通しは間違いがないんだって。だけど、事前に察知できたことで私たちがそれを食い止められる可能性もゼロではない。とはいえ、誰が危険なのか、どうして危険なのか、どうやったら回避できるのか、まだ何もわからない。だから、ひとまずなるべくたくさんのサークル関係者でこの情報を共有して、危機を乗り越えたい。それが今日集まってる目的なの。ここにいないのはあとマリオ先輩、カズマ先輩、ユキちゃんの三人だけ。でも危ないのは私たちのうちの誰かかもしれない。今それでどうしたらいいかを相談していたんだけど、まだ答えは出ていない。だから、サオリさんにもユウキくんにもマシロさんにも協力して欲しいの。」



こういう時のリンはまさに天才ではないかと思うほどの能力を有していると感じる。
必要な説明は全部しつつ、隠しておきたい情報はちゃんと隠しきっている。
これ以上ない相談の仕方だ。



「その話を鵜呑みにするなら、私とリンはサークル関係者には含まれないんじゃない?」

「はい。でも間違いがないはずの情報とはいえ、私はもう十分関係してしまってるし、マシロさんだって今この場にいることで関係者だと捉えられないこともないですよね。それに私でなくても、シュンもミアもほかのみんなも、誰かに危機が迫るのであれば助けたい。」

「殊勝ね。でもそういうことならいいわ。私も可能なことは手伝う。でも何ができるだろう。」

「うーん。回りくどい説明には何か理由があるとは思うんですが、それだとあまり前には進まない気がします。意図を台無しにしてしまったら申し訳ないけれど、もう少し情報を共有しましょう。リンさんの言う特別なことの要素には器が関係しているんでしょう?少なくとも僕はそれを知らないかもしれないから、それを濁して説明してもらったのだと思います。マシロさん?とは、実は先ほど初めてお会いしました。シュン先輩たちは察しているのかもしれませんが、器に関する話をしました。その話も必要とあらば共有します。ほかにこの場で器のことを知らないのはどなたですか?最低限そこも把握しないと僕も話すに話せない。」

「器という言葉が何を指すのかみんながわかっているんだとしたら、そのわからない対象は私ですね。」

「サオリさんは知らないんですね、わかりました。ほかには?…いない?驚いたな。だったら探り入れてないでもっと早くみなさんとお話すべきだった。シュン先輩、リンさん、どうします?サオリさんにどこまで伝えます?」