幸福キャンパス 031
「器の…呪い。器の毒、とはまた違うようね。」
「器には呪いだけじゃなくて、毒なんてものもあるんですね。ではもう一つ。器を手にすることで貴女のお姉さんのためになると思っていた理由は?」
「ずいぶん私に対して突っ込んだ質問ね。んー、いいわ。貴方の表現で言う呪い、のようなものかしら。姉が器の呪いに捉われていると感じていたから、器のことをもっと知ることで、さらに器を手にすることで解放できると思っていたのよ。」
「興味深いですね。僕の目的を達成するために有益な情報を貴女はお持ちかもしれない。」
「だといいのだけれど。じゃあ次の質問。貴方と同体の器はどこにあるの?」
「言葉通り。ここです。」
「貴方の胸の中?赤ちゃんの時からってことは、飲み込んじゃったわけでもないはずだし…。」
「所有者を決めた器を、所有者以外が所持するとどうなるかご存知ですか?」
「え?どういうこと?…えっと、わからないわ。私は手にしたことすらないんだもの。」
「所有者の元に行きたがります。器が。この話はあまり簡単に他言しないでほしいのですが、ご了承いただけますか?」
「ええ。もちろん。」
「つまり、僕の体内にある器の所有者が僕ではないがために、僕は赤ん坊の時から今まで器の訴えに捉われ続けています。」
「もっと詳しくお話聞きたいわ。やっぱり改めてお時間いただけないかしら。」
「ええ。どちらにせよ、ちょうどタイムリミットです。この部屋にサークルの方々がいるはずなので。」
「それじゃあ、私は今日はここでお暇するわ。ありがとう。思っていたよりもたくさんお話が聞けて楽しかった。」
「実はこの部屋の中に、器の所持者がいるんですが、と言ったらどうします?内緒ですよ。まだご本人にも伝えていないので。」
*