幸福キャンパス 028
つまり。
ソウの見た未来が正しく、ソウが嘘をついていない、という前提条件を信じるならば。
ケンイチが自ら命を絶ち、器のチームの誰かにも近日危機が迫るけれど、それとは別にもう一人誰かが危機に瀕しているということになる。
それが誰かはわからない。
今まさにソウが見たイメージと同じ状況が起きているわけではないだろう。
近日そうなるはず、ということか。
「やめろ、やめろ、って自分が叫んでる感じからそうなってしまう誰かが、男性か女性かとかはわからない?」
「えっとね、リンさん。普段自分が喋ってる声ってあまり意識しないでしょう?よほど声に自信があるとか特徴があるとか、普段から意識しているような人がいればわからないけど、そんな印象で第三者の声が聞こえるのと違うから、あんまりわかんないんだ。」
「なるほど…。とすると、ケンイチ先輩のことがあって、連続意識混濁事件が起きて、普通じゃないことがたくさん起きてる中でのことだから、それらとは無関係ではないはず、ってぐらいのことしか検討がつかないことになるのかな。」
「あ、そうだね。私も自分の身近の誰かについて、器がその危機を教えてくれてる、って認識しかないから、少なくとも私の周囲には関係してるはずだけど。」
「うん、じゃあもうそこは前提として一連の流れに関係する事件だと思って動いた方がいいかな。元々予見された危機が、感覚では明日か明後日ぐらいに迫ってるはずで、今回のはそれよりも先に来るような言い方に聞こえたんだけど合ってる?」
「うん。そういう印象で伝えたつもり。だけど、そうだ、一つ補足しておくね。私が見る未来は、私たちが行動することで変わっていく。だから、もしかすると初めに明日か明後日ぐらいと思っていた未来は、先延ばしになっているかもしれないし、また別の変化が起きているかもしれない。」
「じゃあとにかく今は器が見せてくれた直近の危機に対応することを考えた方がいいね。」
「そう思う。」
「新たな危機はいつ頃のイメージ?」
「うーん、かなり近い。下手するともう起きてるのかも。私が見たのはここに来る少し前、今から2時間前ぐらいかな。それで急いで来たの。」