Grim Saga Project

幸福キャンパス 027

 
 
 
放課後を待ちきれずにリンが来た。
ほとんど同じタイミングでソウも来た。
何度も同じ話をしなくて済むように、自分が聞いて知っている故人に関するすべての情報を書いたメッセージを全員に送ってあるから、情報共有の必要はない。
検討や議論のみを進めることができる。

リンとソウはそれぞれに頭が良いため、それを理解した上で必要最低限の初めましての挨拶だけをした。
ケンイチの遺体が発見されたことについて知り得た事実は共有したが、そこには感情を含めていない。
推測や気持ちは伝えていない。
そして、それ以外の情報も伝えていない。



「一つ気になっている。カズマ先輩と連絡が取れない。」

「マリオさんもそうだけど、それはあらかじめ連絡を受けていたから、きっと葬儀か故人のご家族に関するドタバタ中、ってシュンは考えてるんだよね。」

「うん。カズマ先輩とも連絡が取れないことは、マリオ先輩にはまだ伝えていない。余計な心配を増やしたくないし、一緒ならその一報は来るんじゃないかと思って。」

「怪しいね。そのカズマって先輩。やっぱりケンイチ先輩がこうなることを選んだ理由と深く関わっていたんでしょうね。それはマリオって先輩も同じなんだろうけれど。どうしても三年生たちは今回中心にいる気がしてしまう、悪い意味で。」

「そうだね。これでソウさんの見た未来が近づいたようにも思うし。ケンイチ先輩が亡くなったことをきっかけにして、今回の危機に繋がるネガティブな感情が生まれるかもしれないし。」

「いずれにしても、マリオ先輩とカズマ先輩にはもう少し詳しく話を聞く必要があるんじゃないかと思う。」

「でも会いに行こうにも連絡も取れないし、居場所もわからない。」

「誰かケンイチ先輩のご自宅がわかる人はいない?」

「ユキさんとサオリさんは最寄駅が近かったはずだけどさすがに自宅は知らないでしょうし。」

「ソウさん、何か新しいヴィジョンが見えたりは?」

「そうだ。それで今日は急いで来たの。また一人危ない。」

「誰?」

「わからない。」

「ほかにわかりそうなのは?」

「多分今回は他殺。誰かに何かをされるイメージ。やめろ、やめろ、って叫んでる。声も映像も曖昧だから加害者も被害者も性別すらわからない。ただ、元々ユウカを心配してた時に見えた危機とはまた違う感じ。まだ途中、みたいな。」