幸福キャンパス 023
タイムリミットが数日後。
危機回避のための猶予は、漠然とした印象より少なそうだ。
あまりにも何もわからない。
一旦臨時で、明日から毎日器のチームは放課後、H大に集合して情報共有することにして解散していた。
ささやかながら防衛策としても。
すぐにリンにも伝えておく。
念のため、姉とその彼氏にも報告を入れた。
まずやるべきことは、曖昧な情報の確定だと考えた。
ケンイチのことをハッキリさせよう。
しかし、ソウの予知は伏せなければならないことを考えると、直接伝えることにはリスクが伴う気がした。
伝える相手はもちろんマリオだ。
間接的に伝える方法はあるだろうか。
手紙のようなアナログな方法が一番だろうか。
その考慮は翌日無用の産物となった。
ケンイチの遺体が発見された。
場所は予知の通り、彼の自宅の最寄りの川で、飛び込んだと思われる場所から数km下流だったそうだ。
死因は水死。
遺書は発見されておらず、靴は丁寧に脱ぎ揃えてあったのが見つかっている。
詳しいことはこれからわかるのだろうが、少なくともソウの予知を否定する事実は何一つなかった。
これらの情報はマリオがメールで送ってきた。
カズマと僕に共有したそうで、他のサークルメンバーへの連絡は頼む、という一言が添えてあった。
マリオは事前に何を知っていたのだろう。
どこまで予想の範疇だったのだろう。
今どれほどの衝撃を受けているのだろう。
とりあえず新入生のサークルメンバーと姉たちに連絡しておいて、カズマとはすぐに会おうと考えた。
サークルの今後、ケンイチの葬儀、色々とカズマの話を聞いておくべきだと思ったからだ。
しかし、カズマに連絡をしても返信はなかった。
リンに状況を伝えたら、学校を休んで今すぐにこちらへ来るとのことだったが、今すぐにやるべきことのメドがまだ立っていないことを伝えて放課後まで待ってもらうことにした。