Grim Saga Project

幸福キャンパス 021

 
 
 
リンはH大生ではないからここにはいない。
そんな言い方をすると別の大学に通っている印象になるから日本語は不思議だ。
しかし、彼女は実際にはまだ高校生である。
きっとミア以外のサークルメンバーは勘違いしていると思う。
とにかく、今ここにいるわけはないのだけれど、この話を聞いた上での作戦会議には欲しい存在だと思った。

ミアを呼んで、ユウカたち四人と合わせて六名になる。
ふと、僕を囲む五人の女性を見渡した。

ミアはムードメーカーっぽいけど、チームを引っ張るならユウカだろうか。
僕はそんなに前に出る方ではないし、ナナミもソノハも主張は強くない。
ソウは、あどけなさも感じつつ、かなりハッキリと喋る。
少しリンにも似た強さを感じる。
彼女も中心に立てるタイプではないだろうか。

思考が逸れた。
一旦リンには事後報告と相談をする、と割り切って、今僕らに迫る危機について意見交換と情報共有をする。
まず、この危機にはケンイチ先輩の失踪、そしておそらく自死は関係するのだろう。
迫るとされる大きな危機が事実なら、そしてケンイチが自ら死を選んだのだとしたら、そのような非日常的かつ重大な出来事二つが無関係だとは考えづらい。

予知された未来、今となっては過去だけど、それが正しいと仮定するなら、彼は自ら命を絶つほどの重大な問題を抱えていたことになる。
それが何なのかは、重要なはずだけれど、今考えて答えが出るものではないという見解で満場一致。
一旦棚上げ。

次に、大前提としてHCLが何らかの、具体的に言えば今回の危機が及ぶ土台になっているであろうこともみんなの意見が一致した点だ。
僕、リン、ミアは元々別の繋がりを持っていたけれど、そういう意味ではユウカたち四人も同じだし、マリオ、ケンイチ、カズマたちも、ユキとサオリもそれぞれ別に元から関係があったとはいえ、このメンバーが一同に介したのはこのサークルの存在あってのことだ。
唯一単身での存在がユウキということになる。

つい今しがた結託した僕ら、つまり僕、リン、ミアと、ユウカ、ナナミ、ソノハ、ソウ。
器のチームとでも呼ぼう。
この七名は危機を受ける側にはなれども、会話を聞くともたらす側になるわけではない気がする。

残るHCL関係者は、マリオ、ケンイチ、カズマ、ユキ、サオリ、ユウキの六名ということになる。
いや、ケンイチを除けば五名か。
この非器チームは危機を受ける側なのかもたらす側なのかはどちらも可能性がありそうだが、仮にケンイチの自死が関係しているとしたら、もたらす側になってもおかしくない。
今思えばケンイチの自死の理由に心当たりがあるから、マリオは異常なほど心配したと考えることも出来る。

未来予知によって訪れるとされる危機は、誰が対象だろう。
少なくともサークルメンバーだとは思う。
しかし、悪意・敵意を抱き、危機をもたらす側はメンバー内にいると断定できない印象ではある。
現段階で話し合えることはまだあるだろうか。