幸福キャンパス 020
ミアを呼んで早速作戦会議を始めるべきだと思った。
できればリンもいた方がいい。
しかし、四人の見目麗しい後輩たちから待ったが掛かる。
僕は、本当に仲間になり得る存在かどうかを確認するのに一人で呼ばれたのだろうと解釈したので、その判断が下った今、もう一人で話を聞く必要はないのではないかと思ったのだが。
いや、待てよ、メッセージには一人で、とは書いてなかった。
とはいえ、どうやら、まだ僕一人に聞きたいことがあるようだ。
というより、それは僕でなくても多数と話したいわけではない内容なのだろうと理解した。
僕でなければいけない理由が思い当たらなかったからだ。
「先輩たちのイメージには虹の色が見えたの。あと、中心にか弱くて淡い色、でも強い光のような、包み込むような、不思議な存在も見えた。先輩、リンさん、ミアさん、どこまでみなさんのことを聞いても良いものか。」
「うーん、それについては今はまだあまり話したくないなあ。というより、僕らもわからないことだらけ過ぎて、何一つ精確なところを伝えられない、という感覚なんだ。」
「あ、ねーねー、じゃあシュン先輩、さっきソウが言ってた不思議な中心の存在ってのは?」
「うん、それは心当たりがある。本当に不思議で、正直なところ僕はあの人を人間だと自信を持って伝えることすらできない。」
「えー!?人間かどうかもわからないんですかぁ?」
「あら、ソノハがそんなおっきい声出すなんて珍しい。ん、でも、私も興味はあるな。」
「それじゃあ勝手に話しても不正確かもしれないから、僕が感じてるところだけ少し伝えようか。もし、あの人が人間じゃないとしたら、きっと妖精なんじゃないかと本気で思う。そんな印象かな。」
「妖精…。」
「ソノハ好きそう。」
「ナナミちゃんだって人のこと言えないよう。」
「まあまあ、二人とも。アタシも興味はあるけどさ、そこは一旦棚上げにしよ。シュン先輩とリンとミアだけじゃないんですよね、その不思議な妖精さんの集まり。」
「そうだね。でも、他の人たちは基本的には、その、えーと、仮に妖精としておくけれど、その妖精が招集掛けて集まるから、僕が今この迫る危機に対して、すぐに協力を求められるのはやっぱりリンとミア…、あ、もしかしたらもう二人。ユウカさんたちもちょびっとだけ会ってるけど、僕の姉とその彼氏も力になってくれるかも。」
「なるほど。十分わかった。先輩、ありがとう。見ず知らずの私の話を信じてくれて。」
「いや、こちらこそ。ところでソウさんはユウカさんたちと違ってここの学生じゃないよね。今後は基本、遠隔協力かな?」
「うーん、基本はそうかもだけど、下手するとユウカたちの命に関わるから、顔出します。後悔したくないし、失いたくもない。」
「その、以前の事件、大変だったんだね。」
「あれは私、思い出したくない…。」
「ナナミちゃんは悪くないもん。」
「ああ、ごめん、よく知らずに言っちゃって。」
「ううん。アタシたちこうしてみんな無事だし、大丈夫。今回だって絶対どうにかするし。先輩も、お願いします!」
「ああ、僕も後悔も失うのもイヤだ。」
「うん。ところで先輩。先輩の能力って聞いちゃっていいモノ?」
「ああ、うん。未来予知ほどのものではないけど、僕の能力は透視。」
お決まりだ。
目の前には女性が四人。
何人かがバッと下を向き、自分の服装を確認する。
この勘違いを解く面倒もなんだか少し懐かしく、以前の自分とはたしかに違うのだな、と自覚させてくれたりするのだから面白いものだと思う。