Grim Saga Project

幸福キャンパス 019

 
 
 
たしかに、川を探せ、という内容はケンイチ自身の死に関係していないと通常知り得ない。
直接警察への連絡はしない方が良いだろう。
本当にそれが自殺なのであれば、それが証明されるのであれば、疑われても関係はないけれど、それは後のことになるはずだ。
この子は賢いな、と即座に理解した。



「わかった。ケンイチ先輩のことはもう少し考えてみる。おそらく、彼を一番心配していた他の先輩に伝える。それで、僕に会うとどうして危機が回避できるんだろう。」

「私の器はほんの少しの未来を、私に見せることで危機を知らせてくれる。だけど、その回避はとても難しい。回避の成功率を上げることができる仲間がいるから会いに行きなさい、と器が教えてくれたから。」

「君は器と言葉を交わすことができる?」

「交わしたことはあるの。でも自由に会話できるわけではなくて。今回は夢の中でのお告げのような感じ。」

「それが僕だというのはどうやって?」

「今回の報せ、お告げは言葉というよりはイメージみたい。ユウカたちのすぐそばにいて、何人も、力を合わせて、不思議な力を行使する人たちがいる。ユウカだけでなく、ナナミとソノハにも話を聞いて、はじめはユキさんとサオリさんの可能性も考えたけど、おそらく違う。私が会うべき人たちの中には男性もいるように感じたし。シュン先輩だけでなく、ミアさん、リンさんもきっと力を貸してもらうべき方々なんじゃないかと、私は思った。」

「なるほどね。それが正解なのかどうか、僕にはわからないけれど、少なくともリンもミアも、僕が仲間になるなら彼女たちも仲間だよ。イメージってことは、僕たちが何をどうすれば危機を回避できるかまでは、具体的にはわからないってことでいいのかな?」

「ええ。ただ、私たちに悪意や敵意を持つ誰かがいる、またはこれから出てくる。」

「天災的な危機ではなく、人為的な危機が今回回避すべき対象ってことだね。それがわかるだけでも比較的対応がしやすい。」

「あの、疑わないの?」

「何を?」

「私を。」

「うーん、まだまるっきりすべて信じているわけじゃないから、例えばこの話が全部嘘だった時に君たちが得をするような、それがなんらか危機回避に繋がるような可能性はないかな、とは考えているかな。」

「ああ…。」

「多くの人は意味もなく嘘はつかないし、嘘をつく時はたくさんの真実の中にひとつだけ嘘を混ぜたりする。だから、きっと今の話のすべてが偽りという可能性は低いと思うよ。そもそも器のことを知っている時点で、もうそこが一つ真実だしね。」

「たしかに。ユウカ、シュン先輩は大丈夫。確信したよ。だから、リンさんとミアさんも大丈夫。」

「はー、そっかあ。ひとまず良かったー。私たちだけじゃ心細いんだよ…。アタシたち、アンタみたいな特別な力があるわけじゃないしさ。シュン先輩、そんなことなので改めて力を貸してください。」

「いや、こちらこそよろしくお願いします。しかし、彼女の未来を見る力、とても危険だね。これは僕だけの話にとどめよう。というか、僕も知らないことにするよ。下手するとこの情報は、君の命に関わる。」

「はい。ありがとうございます。今のところ、私のこの力のことを知っているのは、今この部屋にいる人だけ。」

「じゃあその中から表向き僕は除外してもらえるようにしよう。何かが見えたら、ユウカさんかナナミさん、ソノハさんから聞けばいい。…って思ったけど、そうもいかないのかなあ。こっちにも色々見えちゃう人がいるんだよね。」