Grim Saga Project

幸福キャンパス 014

 
 
 
日付が変わった。
ユウキはまだ目覚めない。
何度か声を掛けたり、肩を叩いたりしてみたけれど。

人と接することが得意ではないように見えたこの若者が、いかにアルコールが得意でないとはいえ、いかに疲れていたかもしれないとはいえ、こんなにも深く眠るものだろうか。
さすがにおかしいと感じるし、ここにいる全員が早かれ遅かれそう思ったはずだ。

ユウカたち三人は徒歩帰宅圏内。
僕たちは歩くと少し距離があるけれど、先手を打っていた。
ユウキが目覚めたら、彼も含め、ミアもリンも車で送るつもりだ。
姉とその恋人に、もしもの時は迎えに来てくれるように頼んであったのが功を奏した。

先ほど全員にそれを伝えると、みんなからわずかに感じていた焦りが消える。
しかし、思い通りには行かないものだ。
ユキとサオリに連絡は取れないが、そういえば僕は先輩たちとはメッセージの交換ができる。
先入観で先輩たちに連絡しても仕方ないだろうと思っていたけれど、後から思えば一本メッセージを入れておくだけでも抑止力にはなっただろう。

マリオからメッセージが来た。
内容は不可解極まりない。



「そっちはどう?こちらはたまたま家が近かったので一杯飲んで帰ろうとしたんだけど、途中でみんな見失ってしまった。」



どういうことだろう。
何があると一緒に飲んで帰ろうとした仲間を見失うのだろう。
とりあえずこちらはユウキがまだ目覚めないことを簡単なメッセージで伝えるに留めた。
車がどうとか下手に書くと長くなるからそれは避けて、こちらの心配は無用であるとも付け足した。

マリオの言う通りだとすると、詳細に何が起きたかは置いておくとして、カズマとケンイチ、ユキ、サオリの四人で行動している、もしくは帰宅したということだろうか。
メッセージのやり取りではラチが明かない気がしたので、明日改めて聞こうと思い、追求はしなかった。
ソノハが献身的にユウキを看ていたためか、ようやく彼が目を覚ました。



「う、…ぅぅ、、ん…。」

「ユウキ、大丈夫?」

「ん…、ん、よく、…わからない、なんだかだるい、…眠い。」



薬ではないだろうか。
ユウキの気怠さはただの疲労とは明らかに違う。
とりあえず、姉さんたちが来るのを待って、再度会計を済ませた。
ユウカたちは本当に徒歩5分程度だということだったが、近くまで一緒に行くことにした。
ユウキだけ車に乗せてもらって、行き先を伝えて僕とリン、ミアは酔い覚ましも兼ねて歩く。
たしかにすぐに彼女たちの寮に着いた。

ぼんやりはしているものの意識を取り戻したユウキも車で送り、その後、ミア、僕とリンが送ってもらってどうにか解散となった。
帰宅した頃には二時を回っていた。