幸福キャンパス 012
「ユウキくんとは高校の頃はあまり仲良くなかったの?」
「そうですね。同じ高校だっただけで、面識があるかなぐらい。正直、ソノハが覚えてなかったらナナミとアタシはわからなかったかも。」
「高校生の頃もおとなしいタイプだったのね、彼。」
「じゃあどうしてこんなサークルに入ったんだろうね。なんとなく、僕の印象だけど、ユウキくんとこのサークルって合わない気がするんだ。どうしても違和感を覚えてしまって。」
「ああ、シュン先輩もですか。私たちもその話をしてたんです。というか、さっきの話、詳しくお願いできますか?私たちとも無関係ではないかもしれない。」
「ナナミさんたちも何か訳アリっぽいね。」
「そうね。でも約束。先に詳しく聞かせてほしいな。」
「あはは。シュン、リンちゃん、いいかなあ?って、もう遅いよね?」
「うん。」
「適当にごまかせないでしょ、もう。」
「へへ。ごめーん。でも、もしかしたら三人とも協力してくれる気がするよ。それに今まで思いつかなかったけど、先にサークル内の女の子たちとこうして打ち解けて理解を得ておいた方が確実かもだよね。その方が手っ取り早くない?」
経緯は省くも、僕とミア、リンがここにいる理由を伝える。
ミアへの未遂事件については一旦伏せつつ、このサークルがいかがわしい目的で行われている可能性を疑っていて、それを調べているという話だ。
すると、ユウカから意外な答えが返ってきた。
「ふーん、実はアタシたちも同じ理由でここにいるんです。でも、さっきまでアタシたちはシュン先輩も首謀者側かと思って見てました。やたらみんなのこと観察してるようだったし。それに女の子を引き寄せているのは先輩ですよ?」
「たしかにそういう理由で、僕がいることで新入生の勧誘が促進できるから助かる、って言われてこのサークルに招かれた。だけどむしろ危険な目に遭いそうな子を先に見極めておけるならメリットの方があるかと思って。」
「あー、でもそういう理由だったなら納得かも。ほっといたところでこういう緩い集まりなら参加しちゃう子、いそうだし。」
「え、でも、そうなると…、もしかして、さっきのユキちゃんとサオリちゃんってやっぱ危なくない?先輩たちと帰ったよ?」
「わかりませんけど、うーん、多分大丈夫じゃないでしょうか。さすがに今何か起きたら怪しまれることぐらいわかりますよね。」
「いや、でも一応気をつけないと。僕たちが初めにこの集まりは怪しいと思った時って、明らかに先輩たちが怪しまれるはずのシチュエーションだった。また起きないとは言い切れない。」
「追う?」
「でもどこに行ったかわからない。」
「誰か二人のどちらかと連絡取れないの?」
しかし、僕とリンはもちろん、ミアもユウカたち三人もまだメールもSNSも何も交換していないとわかった。
闇雲に追っても無駄だろう。
ユウキもまだ眠っているし、一旦ここは何も起きないことを祈って、明日にでも無事を確認するしかない、と結論付けた。