Grim Saga Project

幸福キャンパス 009

 
 
 
「こんにちは。リンといいます。私は学校も違うんですが、シュン、ミアとの縁でたまたま遊びに来ていただけです。サークルのメンバーではないのですが、せっかくなので今日はお邪魔しちゃいました。よろしくお願いします。」



一番自己紹介が必要ないはずのリンが、11人の歳上を前にまったく物怖じしない。
マリオ、カズマに続いて三番手だ。
パラパラと拍手が聞こえたのは、初の女性の自己紹介に対して、カズマが手を叩いたからだろう。
メンバーの観察を心掛けた直後だったにもかかわらず、いきなりリンが話し始めたものだからぽかんとそちらに注目してしまった。
しかし、どことなく女性メンバー全般からの視線は冷たい気がした。
女性って怖いな。

もちろんミアからはその冷ややかさを感じなかったが、もしかするとこれは先ほど聞いた容姿の評価と関係があるのかもしれない。
しかも関係者ではないから仲良くしておく必要もないともなれば、こんなもんだろうか。
一切そんなことを気にしていない素振りに見えたが、乾杯直後とはいえ、リンは少し顔が上気しているように見えた。
酔っているのかもしれない。

一番奥のテーブルから順番に一人ずつ、という流れだ。
奥にカズマ、リン、ユキ、新入生の女性。
真ん中にマリオ、ミア、新入生の男性と女性。
そして手前の僕のテーブルにケンイチ、サオリ、新入生の女性。
一人一人挨拶をしていった。
ケンイチの声を初めて聞いた。
野太いが小さな、自信のなさそうな声でボソボソと喋っていたので、ほとんど誰もロクに聞こえなかっただろう。
なぜか僕はトリになってしまった。



「シュンです。二年生は僕一人みたいです。この春からの参加なので新入生のみんなと変わらず、まだなんだかよくわかってないけど、先輩風を吹かすつもりもないから、気軽になんでも聞いてください。僕でわかることなら答えるから。」



ほかの人たちの挨拶を聞いてしまっていて、ロクに考えずに喋った。
だから、特に飾ることもなければ、何の戦略もない、ただの素の自己紹介だ。
よくよく思い起こすと自分の紹介などまともにしていない。
あとからリンに聞いたところによると、以前からは比べ物にならないぐらい、物怖じせず堂々として見えたそうだ。
それなら良かった。

ほかのメンバーの挨拶を聞いてしまった割には名も知らぬ新入生たちの自己紹介はほとんど記憶に残らなかった。
かろうじて覚えていた女性たちのことと言えば話しているのを見た印象と、名前ぐらい。

ユウカ、小柄で愛らしいが気は強そう。
ナナミ、非常に美しく、素の自分を見せていない印象。
ソノハ、容姿も話し方もほんわか。
この三人の新入生女性陣は、元々友人関係だそうだ。

あと、先輩方と僕以外で唯一の男性、一年生はちょっと引っかかった。
女性たちよりは印象に残ったという意味だ。
ケンイチとはまた違うけれど、やはり自信のなさが現れた喋り方だ。

彼は、ユウキという。