幸福キャンパス 006
ユキとサオリは予想を裏切ってHCLに入部してきた。
サオリがあまり浮かれていないようだったから、ユキをたしなめて入部を止めるものと思っていたから意外だった。
しかし仕方がない。
新入生勧誘は、春から一ヶ月程度地道に続けられてきたが、ほかには女性が三名と男性が一名所属したらしい。
マリオからサークルの状況についてそう聞いたが、その四名について僕はまったくわからなかった。
ミア、ユキ、サオリも入れると新入生は合計で女性が六名、男性が一名ということになる。
二年生は僕一人、三年生が先輩方三人。
全部で11名、内男性五名、女性六名だ。
姉さんの病気という一番大きな問題が先日一区切りついた。
みるみる回復して、もうとっくに退院している。
元々アパレル関係の店員をしていたのだが、その会社は正式に退職した。
力になると言った以上、そんなことをしている場合じゃない、というのが言い分だが、驚くことに彼氏と行動を共にしながら謎の仕事を行うことにしたようだ。
それは食っていけるのだろうか、と思ったがそこまでは口を出すことではないと思い、やめておいた。
とはいえ、僕は僕で大学の勉強と並行して、過去の文献などを調べたりして、器についての詳しい情報を収集している。
これだけでも十分忙しいし、リンとの時間も相変わらず可能な限り取ろうとしているので、HCLで活動するのは週に一日と決めていた。
ミアはもう少し頻繁に様子を見に行っているようだ。
「何したいか全然わかんない、あの人ら。よく他の子たちも居続けてるなあ、と思うよ。」
「案外あんな感じの緩い集まりの方がみんな気楽で良かったりするのかな。僕には理解ができない。」
「やあ、ウチもやって。他の同級生たちから、ちょくちょくシュンとの関係を聞かれるのがちょっとツライね。」
「なんて答えてるの?」
「あー、入学前からの知り合いだから、仲は悪くないかなって感じでゆるーくかわしてる。」
「そういえば僕は他の四人って知らないんだけど、ミアはもう会った?」
「女の子三人は会ったよ。ユキちゃんとサオリちゃんは覚えてんだよね?」
「うん。なぜかあの二人は印象に残ってたみたいで。」
「聞いてると、他の女の子三人も勧誘の時点でシュン先輩とは会ってるみたいよ?」
「あれ?そうなんだ。どんな子たち?」
「ウチもまだ顔と名前がかろうじて一致するぐらいやからなあ。んー、特徴とか伝えられるほどは知らないかな。みんなめっちゃかわいい。あ、でも、リンちゃんの方がかわいいよ、どの子より。」
「そんなこと聞いてないってば…。」
「私がなんだって?」
「うわあ、リンちゃん!めっちゃ久しぶり!ああ、なんか元気になったなあ…。」
「リン、どうしたの?」
「うん、私もその妙なサークル、一回見ておきたいな、と思ってたから。ダメかな?」
「ああ、それでサークルに顔出す日に合わせて来たんだ。僕は全然構わないけど。ミア、どんな感じにしよっか。」
「そんじゃ今日だけスペシャルゲストでウチらのお友達が遊びに来た、ってのは?」
「それならいっか。嘘もついてないし。」
「あ、でも一つ困ったな。リンちゃんいたらシュンと恋人のフリはできません、さすがに。」
「あ、別に大丈夫だよ、私。そんなに頻繁に見に来るつもりなわけじゃないし、ホントのこと言っても得はなさそうだしね。」
「ええー、でもウチは大根だから多分無理だなー…。」
「ん、でもさ、普段からそんなに恋人のフリしてるわけでもないし、あくまでも先輩たちの前でだけ、必要最低限だったから、別にそんな気にしなくても平気じゃないかな?」
「んー、それもそっかあ。」
三人で話していると、後ろから調子の良いカズマが声を掛けてきた。
マリオとケンイチも一緒だ。