Grim Saga Project

幸福キャンパス 004

 
 
 
活動自体も胡散臭いが、サークルの名はもっと胡散臭い。
サークルの広報誌にはHCLと記載しているが、以前先輩方にそれがどういう意味か聞いたところ、ハッピーキャンパスライフだとの答えで、僕は何も言えず黙ってしまった。
どういう思考だとそんな名前がつけられるのか、まったくトレースできない。
つまり、あまりにもダサい。

サオリとユキの他にも10人弱、入学したての一年生をサークルに勧誘している。
ほとんどが女性だが、体裁もあるのか別の目的もあるのか、比率が少ないとはいえ、男性もいないわけではないらしい。
しかし、男性を勧誘する際には呼ばれないのでよく知らないが、僕は女性勧誘専用の客寄せパンダ的な立ち位置だと認識している。

僕はこの春H大学の二年生になった。
ミアはこの春入学してきて、たまたまHCLの勧誘に遭った。
その時、僕はまだHCLには所属していない。
ミアが受けた勧誘はもっと悪質で、三人と学内でお茶をして話を聞いていたところ、強烈な眠気に襲われたのだという。

次に気付いた時、彼女は夜の学内であまり人が来ない研究室に施錠されて閉じ込められていたのだそうだ。
どう考えても危険だ。
しかし、ミアは彼女の能力で部屋の外に出て、状況を確認している時に僕と偶然会った。
僕はその時初めて彼女がH大学の後輩になったのだと知った。

話を聞いて、初めてHCLや先輩方のことを知った。
おそらく、その時はミアは何もされていなかったようだが、後で何かするつもりだったことは明白だ。
しかし、未遂だとどうすることもできない。

僕はその研究室の明かりを点けて、ミアと二人でそこにいることにした。
その時のこのこやってきたのはマリオとカズマの二人だったのだけれど、予想通りしらばっくれた。
特にカズマの動揺は明らかだったように見えた。

二人から見れば、目を覚ましたミアが助けを呼んで、僕が外から鍵を開けたように感じただろう。
しかし、鍵はミアも僕も、実は開けていない。
つまり、ミアの能力を使って二人で中に入った。
職員室に行けばスペアキーがあったかもしれないが、僕は誰がキーを開けて入ってくるか確かめたかったのだ。

ミアには帰るように促したのだが、断られた。
彼らからしたら、なぜ一人しかいないはずの部屋に二人いたのか、不思議だっただろう。
自分たちしか開閉できないはずのドアをどうやって抜けて僕が中にいたかを聞くことが彼らにはできない。
閉じ込めたのが自分たちだと白状してしまうことになるからだ。
さらに付け加えると、この研究室は三階にあって、窓から出入りはできないし、施錠されていたドア以外に出入口はなかった。
殺人事件でも起きたら密室殺人の話になりそうだ。