Grim Saga Project

幸福キャンパス 002

 
 
 
とりあえずドリンクバーでも、という懐に優しい謎の活動をすることになった。
僕、先輩方三人、女の子が二人である。
さて、ここで一人、追加メンバーを召集する必要に駆られるのがいつものパターンだ。



「それじゃあ、またミアにも声を掛けておきますね。」

「あー、了解。じゃあ、駅の近くのファミレスに集合って言っておいて。」

「わかりました。」

「シュン先輩もすぐに来るんですか?」

「一緒に行こうか。」

「はい!」



さて、一人の貴重な時間は終了である。
僕はミアにメッセージを送り、気の進まない移動を始める。

ミアはH大学の後輩だ。
この春から同じ大学に通うことになった。
そして、このサークルとは別の奇妙なグループで元々仲間だった。
彼女がこのH大学に入学してきたのは、偶然だったらしい。
H大学は比較的、入学に必要な学力が高い。
だから、とても失礼だけど、彼女が入学してきたのは少し意外だった。

僕は引きこもりがちな生活が長かったけれど、中学でも高校でも必要最低限の出席日数は確保し、勉強はずっとしていた。
もちろんそれは他界した両親に変わり、僕を守り続けてくれていた姉のためにほかならない。

到着したファミレスで、七人でーす、一人後から来まーす、と頭の悪そうな態度で席を案内させた先輩はカズマという。
三人の先輩方、最後のもう一人は180cmほどの身長でガタイも良く無骨、無口なケンイチ。
リーダーマリオ、肉体派ケンイチ、そして不遜なカズマ、が僕のいう先輩方である。

席についてからも、先輩方の会話にはまったく中身があるように思えず、自分に話が振られたと感じた時だけ適切と思われる相槌を打ちながら凌ぐ。
そのうち、ミアがやってきた。



「やっほー、シュンせんぱーい、その他のみなさまもこんにちは。」

「あ、ああ、来たね、ミアちゃん。」



相変わらず馴れ馴れしいマリオだが、ミアは明らかに先輩方を適当にあしらいながら、迷わず僕の隣に座った。
適当というと、いい加減に、という意味と、適切に、というふた通りの意味が頭に浮かぶが今の場合どちらもあてはまる気がするから言葉というのは不思議だ。

僕もこうなることを予期して、来たタイミングで隣を少し空けるようにズレる素振りを見せていた。
男性四人が並んで座り、向かいに女性二人が座っていたにもかかわらず、端にいた僕の隣に座るのだから意図的だ。

名も知らぬ女の子の一人は怪訝かつ不快な表情が隠しきれず滲み出ている様子、もう一人は気にせずに薄い笑みを浮かべて談笑を続けていた。
そういえば、初めから一人の子は冷静だった。
少し安心だろうか。