Grim Saga Project

20-63. Crescent a little bit...

 
 
 
 ドラゴンはあれからまったく連絡をしてこなくなった。
 彼の中でグリムの器を欲さずに手に入れるためにはどうしたら良いか、答えは出たのだろうか。
 諦めるとは思えない。
 
 セントメディテという企業についてはこちらから特に調べてはいないけれど、耳にはしないから世間を騒がせるような大きな動きにはなっていないのではないだろうか。
 
 ジルドは一体どうしてしまったんだろう。
 未だにその行方はわからない。
 無事であることを祈る。
 
 カナメとピネは元気だ。
 いや、カナメは相変わらずといったところだけれど、美味しいものを食べることを覚えたせいで体型の維持に苦労するようになったぞ、と先日クレームを入れられた。
 でも微笑んでいたからまあヨシとする。
 色々な店に食べに行く趣味ができたことで、少し外交的になったようにも思う。
 
 ピネは変わりつつある。
 僕たちといるのは楽しいようで、どんどん自分から話しかけるようになってきたし、言葉の歯切れが良くなってきた。
 そしてよく笑うようになった。
 明るくなったのかもしれないし、元々明るかった性格が表に出てきて見えるようになっただけかもしれない。
 
 僕と凛は相変わらずだし、姉さんと尚都氏も。
 ラムと籠様はなぜわざわざ会いに来たのかわからないけれど、二人は無意味にたまたま行動してて会いました、というタイプではないからカナメとピネとはこれからも何らかの関係が築かれていくものと思われる。
 あるいはもう仲間になったという捉え方もできる。
 僕たちだってそう、そういえば明確に仲間になりました、という儀式があったわけではない。
 
 そうそう。
 もう一つわからないままのことがあった。
 いや、正確には色々ある。
 カナメの器はなぜ「次代の先駆」を書かせたのか、とか。
 今気になっているのは、些細なことなのかもしれないけれど、結局.&というのは何の記号だったのだろう、ということ。
 例の会合を主催していたのはセントメディテだったのだと思うけれど、そんな名義にするわけにいかないからつけられた記号であろう、とは思う。
 しかし、だとしたらなぜあんな不思議な記号にしたのだろうか。
 何かの意味があったのだろうか。