Grim Saga Project

19-62. Joining more

 
 
 
 先日も利用したお気に入りのハンバーグアンドステーキハウスは、平日の夕方だったせいか今のところ私たち以外のお客さんはいなかった。
 ラムも呼んで、カナメさんとピネさんに紹介をしようかと話していたその時、店のドアが静かに開いた。
 
 そこに立っていたのはまるで子どものような小さな少女で、私は驚きの余り席を立ち上がって、何も言うことが出来ずに立ち尽くしてしまった。
 傍にモデルかと見紛う美女がいて、ふと私は我に返った。
 
 
 
 「あら、ごきげんよう。アップルさん。」
 
 「ちょうどね、籠様とみんなに会いに来たんだ。なんか籠様が急に行くって聞かなくて。」
 
 「うん。カナメ、ピネ。ようこそ。」
 
 「ようこそ、か…。驚いたな、まさか籠様まで一緒に来るとは思ってもみなかった。」
 
 「え、と、あの妖精のような少女は…?」
 
 「妖精って、実在したんですね…。」
 
 「あ、妖精。そうか、以前セツナがちょっと話していたね。たしかに、これは私も本物の妖精と認識した方がしっくりくるよ。」
 
 「ふふ、みなさんすみません。急にお邪魔してしまって。二人がお世話になりました。」
 
 「驚いたでしょう。ごめんなさいね。私は、んーと、色んな呼び方をされるんだけど、リサ、なんて伝えたの?あ、ラムなのね。ってことで、私はラム。ちょっと色々複雑で愛称がたくさんあるのよ。さっき籠様が言ったアップルさんってのは、凛ちゃんのことね。で、籠様っていうのは、この妖精のような少女のこと。ちょっと不思議な感じだと思うけど、人間の子どもとは少し違うはずだから見た目は気にせず普通に接して平気。」
 
 「平気。」
 
 「あなたは、妖精ですか?」
 
 「ピネ。私は貴女の言う妖精ではないとは思う。羽も生えていないし、空も飛べない。…だけど、貴女が私を妖精だと思うなら、それもまた真実なのかもしれない。」
 
 「籠様、はじめまして。カナメと名乗っています。あだ名ですが。こちらこそセツナにもリンにも出会えて良かった。とても助けられました。貴女はグリムの器を、またはマスタたちを集めて一体何をしようとされているのですか?」
 
 「元々はね、人を探していたの。私の大事な人を。そのための様々な経緯の中で今は、具体的には表現できないけれど大きな危機を回避しなければいけない。だから、今はみんなの力が必要。」
 
 「さてー、ここはお肉おいしいのよね。今日はハンバーグにしようかなぁ。あ、私たちも一緒にご飯、でいいよね?」
 
 「籠様、お肉とか食べるの…?」
 
 「うん。食べるよ。そんなにたくさんは難しいけど。」
 
 
 
 なんだか前にもこんなような、ふとみんなが集まってくるようなことがあったような気がする。
 カナメとピネは驚いていたけれど、梨紗と尚都、籠様とラム、4人とはじめましてをすることになった。
 総勢8名が並んだ4人掛けテーブル二つに跨って、店内の一画を占有する形で食事兼談笑の場が設けられる。
 
 なんといっても好奇の目は籠様に向けられたが、当の本人は他人事のように澄ました顔をしている。
 雑談にはほとんど入らずに話を振られた時だけ返すポジションを決め込んでいるようだった。