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「それでは、少し方向性を修正しよう。セントメディテにはまだ価値があるかどうか。これを占うことは?」
「ええ。なんでも占うわ。セントメディテというのは何?」
「俺が経営している会社の一つだが傾いている。」
「貴方次第ね。まあ会社なのだから当たり前だけど。でも、そうね。ある意味貴方が携わっている中で一番伸びしろがある企業なのはそこよ。ほかは堅実にやればいいのでしょう?そうじゃない数少ないピースね。」
「たしかに。順風満帆に飽きた俺にはちょうどいいか。」
「ほかには?」
「うん。そうだな。貴女がグリムの器である、と証明することはできるのかな?」
「ふう。貴方も懲りないわね。占いの範疇じゃないわ。それにグリムの器を貴方は定義できる?」
「定義か、たしかに難しいな。それではこうしようか。心を持つ無機物、これをグリムの器と仮に定義するとして。貴女がこのグリムの器であることを証明できるか。」
「そうね、ではこの身体の本来の持ち主である根室雛には知り得ないことをお答えする、でどうかしら。私から伝えることが信憑性を落とすのであれば、貴方が自分しか知り得ないようなことを質問してくれればいいわ。どれもこれも占いの範疇ではないのだけど。今日は大サービスね。」
「なるほど。ふむ。それでは先ほどの俺の名のように何らか知り得たりあらかじめ知ってしまうことができない質問、という意味だな。貴女が何をどのように見通せるかわからないが、いくつか質問させてくれ。例えば、そうだな、まず一つ。俺の今日の朝食は?」
「貴方の定義で言えば食べていないわね。でもヨーグルトは朝食べている。ああ、数年前から体調が思わしくないのね。それを気にして毎朝朝食代わりにヨーグルトを摂る習慣にしていて、貴方はそれを朝食と定義していない。」
「ふむ。ではこれはどうだ。今から俺が考える内容を当ててくれ。」
「まあいいわ。貴方私のことを全知全能の神とでも思ってるのかしら。テレパシが使えるのがグリムの器と定義されたわけではないと思うんだけど。くだらない…。チャーハン、焼きそば、…ああ、なるほど。なるべく無関係なことを考えようとしたのね。もういいかしら。」
「ああ、占いの範疇から外れてばかりですまなかった。それでは、俺が貴女を手に入れられるかどうかを占ってくれ。」
「ふふ。今日のお尋ねの中で一番面白かったわ。可能性は低いわね。かなり多くの偶然が重ならないと。」
「今のは感想かな?」
「いいえ。占いよ、見えたことを伝えただけ。」
「んー、それでは、貴女以外のグリムの器で一番近いものはここからどれぐらい離れたところにあるのか、はどうだろう。」
「あら、びっくり。思ったよりたくさん近くにあるわ。貴方の行動圏内ぐらいでも…そうね、二桁に達するぐらいはありそう。」
「そんなにあるのか!」
神さまだけのことはあるな、と思う。
今まさにこの場にすら器が存在することを当然見通していて、それをそのまま結果として伝達するのは都合が良くないから、そう悟られないようにごく自然に答え方を調整した。
しかし、実際そんなにたくさんあるものなのか、グリムの器というのは。