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イレギュラーな.&会はこんな風に始まった。
ドラゴンが合流すると、結局ジルドが欠員だった前回と同じメンバーなのだ。
「あれ?三人とも早いね。俺と会話するための作戦会議かい?」
「やあ、ドラゴン。突然呼び出してしまって申し訳ない。まあ、ある意味緊急事態だったからね。早めに会話してしまった方が良いと思って。会議室がちょうど空いたみたいだから移動しようか。」
「うん。あ、会議のスタートでまた飲み物ワンオーダーは必要なんだって。みんな何にする?同じでいい?まあ、とりあえず移動しちゃおう。」
「ああ、じゃあ俺はアイスコーヒーにするよ。」
「じゃ、私、頼んでおくね。」
「ありがとう、ピネ。さて、ドラゴン、早速なんだけど。君の元にも来訪者はあったのかい?」
「ない。どんな用件だったんだ?」
「うん。簡単に言えば、グリムの器について知ってることを全部教えてくれ。ピネの器を譲ってくれ、だね。先に伝えておくけど、私たちはピネが占いで使っている宝剣がグリムの器かどうか、という点において答えを持っていない。その可能性についての認識はあったから、確証を得たいんだけど、どうやったらわかるのかを調べていて結論が出ていない段階だった。それは今も同じだけどね。」
「なるほど。三人の基には刺客が訪れた。俺のところには来ていない。となると、君たちの結論はどうなる?」
「あ、あ、あの、それは…。」
「うん、ピネ、大丈夫だよ、僕から。まあ、三人の総意とまでは言わないまでも、可能性として高いと思っているのは、その刺客はドラゴン、貴方と繋がっている、というストーリーだよ。なんならこの会についても、やはり貴方はその開催をコントロールしている何らかの組織または団体と関わりがあると考えるのが一番しっくり来る。どうかな?」
「はは。すごいね、セツナ。カナメもピネも。ここまで来たからには腹を割って話そうか。おおむね君たちの推論は正しい。はじめの問いに対して、俺の基にも刺客は訪れた、と答えて誤魔化す手はあったんだ。だけど、ここまで曖昧にして来たとはいえ、実はこの活動を秘密にする意図はそんなに強くない。君たちが本物のグリムの器に関わっているとすれは尚のことだ。それで、あとは何が聞きたい?」
「へえ。意外だったよ。あっさり認めるんだね。聞きたいことはたくさんある。セツナもピネも色々聞きたいことはあるだろうけどまず私から一つ。ドラゴンと、この会の主催側とはどういう繋がりなんだい?」
「うん。いい質問だ。それがわからないと、俺にどこまで何を聞いて意味があるかの判断もつかないだろうからね。正直に話すとするよ。仕事を色々と手広くやっていてね。その一つに俺自身が経営している会社がある。君たちのところに行ったのはうちの会社の社員だよ。訪問は俺の指示ではなく、彼ら自身の判断だったようだけど。」
「ということは、この会の主催はドラゴンが経営する会社で、その運営会社の社長がわざわざ参加しているってことか。それは何か理由があるのかい?」
「この会の企画・運営も、君たちへの訪問同様、俺の指示じゃない。社員の皆が進んで行っているものだ。当然俺はそれ自体は把握・認識していて、承認もした。で、興味があったのさ。この会がどのように行われるのかが。この会はここだけでなく、全国各地のいくつかの地域で実施されていてね。一番参加しやすかったこの場に混ぜてもらったわけだ。」
「となると、次は会の目的は何なのか、って話になるよね。やっぱりグリムの器?」
「ああ、その通りだ。数年前、ビジネス上の理由でグリムの器の入手が必要になってしまってね。とはいえ、ある程度はおそらくご存知の通り、このグリムの器ってのが実在はするようなのに、噂の類ばかり耳に入るが実物にとんとお目に掛かれない。真剣に所在を掴もうと考えた時に社員から出て来たアイデアの一つにこの会の実施があったんだ。面白いと思ってね。やってみてもらうことにした。」
「他地域の会の進捗は?」
「いや、ないよ。だからこそ今回の君たちの存在が大きいし、動き方がわからず違和感を与えてしまったかもしれない。そこは申し訳ない。」