Grim Saga Project

17-55. 2XXX.0XH03

 
 
 
 「あ、ピネ。早かったね。」
 
 「こんにちは。カナメさん、セツナ。」
 
 「ドラゴンが来るまでちょっとお茶してようか。」
 
 「はい。」
 
 「ピネ…。なにか、こういつもと…、一応聞いておくけど、あらかじめ入れ替わってはいないよね?」
 
 「うん。」
 
 「まあ、とりあえず座らない?」
 
 「ああ、そうだね。まだ約束の時間までだいぶある。ピネも何か頼むといい。」
 
 「うん。それじゃ、アールグレイの、ミルクティにしようかな。」
 
 「緊張してる?」
 
 「少し。…でも大丈夫。…今日は、私に任せて!セツナたちはマスタの話、しちゃダメだから。」
 
 「そっか。ピネはピネの覚悟を決めてきてくれたんだ。でもピネこそそんなに気を張らなくて平気だよ。カナメもね。僕たちは、なんだかわからないけどこんなことにばかり遭遇していてね。きっと器に選ばれてるんだよ。終わったら美味しいハンバーグでも食べに行こう。リンも呼ぶから。」
 
 「ああ、それはいいな。俄然気合が入ったよ。」
 
 「私、ティラミス食べる…!」
 
 「その意気だ。」
 
 「…ある意味、今のこの状況なんてまさに日常の中の非日常だね。」
 
 「うん。やっぱりあの会は、器のためのものだと思う。」
 
 「ああ、もう一つ気になっていたことを思い出した。ジルドはどうしていなくなってしまったんだろう。あの時も違和感はあったけど、ここまで大きく状況が変わってくると一層おかしな感じがするよね。」
 
 「たしかに。」
 
 「ジルドさんは、ドラゴンさんと知り合いだった、はずなので。…この後、聞いてみてもいいですね。」
 
 「ねえ、ピネ。もし、ドラゴンが力ずくで君の器を奪おうとしたらどうするつもりでいる?」
 
 「え、えーっと…。」
 
 「すごい質問だね、セツナ。」
 
 「や、だって、こんな覚悟を決めた顔されちゃったらそれはどうしたって心配になるよ。でね、もしそうなってもその宝剣でドラゴンとかその仲間を傷付けるような解決は避けよう。暴力は暴力を呼ぶし、禍根も生む。それに近いケースもこれまでに経験がなかったわけではなくて、あまり後味は良くないよ。どうせ彼らには使えない器なら、もし奪われたとしても悪用はされないんだから、こっそり奪い返せばいいだけだから。」
 
 「え、う、うー…。」
 
 「それはそういうことをするのに向く能力を持つマスタがいる、と解釈していいのかな。」
 
 「うん、そうだね。ちょっとここで詳しく伝えるのは避けたいけど、事前にもいくつか手を打ってきているし。」
 
 「でも、わ、私は、もし二人がツラい想いを、するようなことが、あったら…。」
 
 「ピネ、ありがとう。神さまから何か今日のことについて聞いていることはある?言いたくないことがあれば言わなくて構わないから。」
 
 「うん…。私は、みんなを守りたい、って言った。リンちゃんも。はじめて、ちゃんと、友達ができて。私、こんなんだから。でも大事だな、って。だから、私はできることを、したいなって。そしたら、神さまは、いつまでも自分に頼っていてはいけないよ、って。」