Grim Saga Project

17-54. 2XXX.0XH02

 
 
 
 「僕はドラゴンが器を狙っている側にいると思っている。カナメはどう?」
 
 「うん。同感だね。ただ、裏ピネ様のありがたいお話では敵にも味方にもなり得るはずだった。セツナの予想の通りなら、つまりドラゴンは既に敵の側に回ってしまったということになる。どこでその運命は決まったんだろうね。予言が正しい前提にはなるけれど。」
 
 「うーん。そうだなぁ。実は占いの時点ではもう決まっていたんじゃないかな。っていうのは、結局僕や凛との接点を強めたことが、ドラゴンとの溝を作ることになった気がしてならない。」
 
 「へえ…どうしてそう思ったんだい?」
 
 「グリムの器がこういうもので、僕らはそれに関わる色々な事件に巻き込まれてきていて、それでもこの器が必要で、人の手に余る力を秘めていて、…そういうものである認識を植え付けたからこそ、ドラゴンは器を手にする可能性を低減させられたんじゃないかな。」
 
 「彼が味方になるケースはどういう場合だったんだろう。……ん、うーん。一つ思い付いたよ、セツナ。私の提唱する説は、先ほどの私の話を覆して、ドラゴンはまだ味方につけられる可能性がある説!」
 
 「それはいいな。ぜひ聞きたい。」
 
 「ふふ。もうちょっと待ってくれ。少し自分の中で整理がいる。やはり早めに来て良かった。これは収穫だ。話を続けたい。色々な角度からこの話をできた方がなんとなく説得力が増しそうだ。あくまで私の中で、だけれど。」
 
 「うーん。そうだな。そしたら、例の組織について考えてみようか。と言ってもあまり言及できることはないんだけど。彼らはグリムの器を手にしたら何がしたいんだろう。グリムの器は人間には持ち得ない能力を持っているけれど、万能なわけではないし、個別に能力も異なる。何か具体的に成そうとするなら、その目的に適合した器でなければならない気がするんだけど。」
 
 「ああ。それはそうだね。私はそこは一定の結論を持っているよ。大きく分けて、おそらく二つのケースが考えられる。そのどちらかじゃないかと思ってる。一つは、グリムの器を知っていて興味を持っている単一の誰か、不特定多数の延長だと思うんだけど、そういうものがあるって知って漠然と欲しくなった延長だね。具体目的がない、もしくはその目的が個別の能力によるものではないケースだよ。人間は希少性の高いものに高価値を見出すから能力の特性と無関係に目的が成立する。二つめは、具体的な目的があった場合でも、それに見合う能力の器に当たるまでしらみ潰しに器を求めている、というパターンだね。または、人間には持ち得ない能力なら何某かその目的遂行の力になると考えているか。まあ、分類を分けただけで、具体的に何かがわかっているわけではないんだけど。」
 
 「んー、なるほど。組織的に動いている以上、理には叶うだけの理由があるのかなあ。あとは正確な情報が伝わっていない、って可能性はあるかな。まあ僕らもそんなにわかってはいないんだけど、万能のアイテムであると勘違いしているとかね。」
 
 「うん。詳細不明だからこそ、期待値が大きくなり過ぎて現実と乖離している可能性はあるよね。だから、この前言ったような、もし入手できても器に選ばれなかったら、能力は発動できず意味なんてないのに、って話もある。」
 
 「そうだね。おそらく僕たちはグリムの器を追う一団の中では比較的詳しい情報を持っている側にいると思うんだ。マスタも多いし。でも、噂レベルの話に期待や希望を持っているだけの、情報不足の人々は多いと思う。たしかにもし今回の組織もそちら側であれば、何か勘違いをしていたり思い込みが含まれている可能性は十分あるね。」
 
 「うん。まあそこまで不確定要素がたくさんあると、やはり現時点で組織の目的を特定することは困難だ。推測が多くなり過ぎてしまう。」
 
 「ああ。そういえばさ、カナメの器が例の作品を書かせた理由が、実はこの動きに関係しているってことはないかな?」
 
 「……え?」
 
 「ん?」
 
 「あ、いや、すまない。驚いただけだよ。素晴らしい発想過ぎて。まったく思い至らなかった。もし、…そうだとしたら、んー……。いや。しかし。」