Grim Saga Project

16-52. Piece of Courage

 
 
 
 だから。
 カナメ、セツナ、リンは大切だった。
 私を、そのまま受け入れてくれた。
 生きることさえ諦め掛けて、謎のアーティファクトに救われなかったら、さぞ惨めだったであろう私と普通に接してくれる。
 
 だから。
 このドラゴンとの対話で、器を搾取されるリスクを背負うのは私でなくてはならない。
 セツナとリンは来てはいけないが、彼らは必ず来てくれる。
 であればせめて、器持ちはすでに情報が流出し掛けている私であるべきだ。
 
 どうしても。
 傷付けたくない。
 失いたくない。
 弱い私にできることは、きっと限りがあるけれど、それでも私は逃げるわけにはいかない。
 
 とても嫌な予感がする。
 ドラゴンは元々苦手だ。
 だからかもしれないけれど、こんな日増しの異質に形容しがたい違和感を覚える。
 神さまの言う力づくの行動がここで起きるなら、セツナとリンは絶対に守ってくれようとする。
 もし、その結果、彼らが傷付くようなことになったら、私は耐えられないし、許せない。
 
 もちろん、この器も奪わせない。
 ねえ、神さま。
 私はどうしたら、友達を、そう呼んでいいのかすらまだわからないけど、大切になってしまった彼らを、傷付けないでいられるんだろう。
 あなたも。
 
 ふふ、と声が聞こえた。
 
 
 
 私を使いなさい。
 私が貴女の身体を借りることを繰り返していてはダメ。
 貴女自身が危機や困難を乗り越えるの。
 
 そんなことを言っても。
 物理的に剣で切り捨てたら殺人だよ。
 そもそも私にそんなことをできるわけがない。
 
 もちろんそうね。
 それでも大丈夫。
 まずは立ち向かう勇気さえあれば。