16-51. The rough end of the Pine
私はダメな人間だ。
幼い頃から両親には心配ばかり掛けた。
内気で、人見知りで、頭が悪くて。
事故で家族と死別してから、私は引きこもった。
誰だかわからないような親戚が訪ねてきては、遺産の話だなんだと色々されたが、私には全員が敵に見えた。
コミュニケーションに難ありだった私を心配するどころか、財産を少しでも我が物にしたい輩ばかりだったからだ。
しかし、当時の私にはそんなことはどうでも良くて、ただほっといて欲しかった。
数少ない信頼できる存在だった両親を失って、私は生きることさえ視野にない。
当時17歳。
そんな時、家の財産整理をしていた業者から確認のために手渡されたのがこの宝剣であった。
私を抜きなさい。
聞こえるはずのない声が聞こえた気がして、私は躊躇なく剣を抜いた。
そこから私の意識は上空に移り、外側から見る私自身は次々に明確な指示を出し、搾取され掛けていた遺産をすべて取り戻し、生活に困らないための条件を整えて、今に至る。
占い師としての職も宝剣が決めてきたものだが、スーパーのレジ打ちは私が自ら始めたアルバイトであった。
元々学校にはほとんど行っておらず、親を心配させていた。
社会との接点がなくなっていたが、宝剣が私の身体を使っている時の生活を見て、私は一人でも生きていくことができるし、そうしなければならないことに気付かせてくれたから、一歩踏み出した結果がアルバイトなのである。
.&の会に足を運ぶようになったのも宝剣の指示によるものだ。
突然届いた不思議な案内状は普通なら怪しむ内容で、私は訝しんだが、宝剣から私が私のまま参加しなさい、と言われたのだ。
初めて宝剣と出会って、遺産相続のことが一段落してからは夜ごとに宝剣と会話する生活になった。