11-41. God Only Knows
この日の最後のお客さんだったそうだ。
夜に神さまと話す時間を取る習慣にしていて、占い師の仕事をしてもらった日は、たまにお客さんの話をすることがあったのだけれど、珍しく神さまから積極的に話をしてきた。
ちなみに、人間同士での対面の会話とは少し異なり、神さまとの会話をするための人間の器が私のこの肉体一つなので、半分脳内での会話だし私は小声で呟いている感じになる。
他人に見せたら気持ち悪い独り言のようになっているだろう。
「釣れたわ。」
「何が?」
「餌。」
「餌?餌って釣る時につけるものじゃないの?」
「ええ、そうね。貴女たちの世界における釣りでは一般的にはそう。だけど、私にとってのこの釣りの餌は占い師という仕事だったの。貴女の生活の足しにもなって一石二鳥でしょう?ふふ。」
「え、えーっと、じゃあ何が釣れたの?」
「餌と言ったのは、私が貴女を支える理由になった、危険に結びつく手掛かりね。まんまとあちらからやってきたわ。」
「え?」
「あの子たちが.&と呼んでいた貴女が足を運んでいる会も効果があったようね。」
「何が起きるの?」
「ええ、私がいるのだから大丈夫。良く聞きなさい。私は貴女たちがグリムの器と呼ぶ遺物の一つ、それはもう理解しているわね?」
「うん。」
「.&は、彼の読み通りグリムの器を探すための仕組みだったようね。その本丸が今日私の元へやって来たわ。お客さんとして。」
「え…。」
「私がグリムの器かどうかを確かめに来たの。彼らには確かめる術はないのだけれど。占いにまで自分たちがグリムの器を入手できるかを聞いて来たほど。だからどうして手に入れなければいけないのかを聞いておいた。色々と納得したわ。そして、彼らはグリムの器を手に入れることはできない。ドラゴンは対立側に回る可能性がとても高まりました。」
「え、え、…どうして.&がグリムの器を手に入れられないとドラゴンと対立することに…、あ、ドラゴンはやっぱりあの会の本部側の人間なのね。」
「そう。貴女も頭が回るようになって来たわね。友人というのは大事だわ。ドラゴンたちは私がグリムの器かどうかを確かめようとしている。だけど立証する術は確立していないから、私を手に入れて色々試したい。だから貴女はそれを拒否しなくてはいけないの。」
「うん。それならもちろんそうするよ。言われなくても。神さまが思う気をつけなければいけないケースってどんなのがあるの?」
「道理はないけど、想像よりも彼らが愚かだった場合に対応が面倒なのは、力ずくでしょうね。」
「うわ、そんな可能性があるのか。」
「ええ、もちろん。比較的可能性としては高いわ。もちろん回避できるならそれに越したことはないけれど、私がグリムの器ではないという証明もそういった見せ方も難しいから、諦めさせるのに手間が掛かる。もしそうなったら、あの二人を頼りなさい。」
「あの二人?」
「セツナとリンよ。そうなった時は彼らの少なくともどちらかが貴女の側にいるから。」