Grim Saga Project

09-36. Three Names

 
 
 
 ちょっとした衝撃であった。
 人嫌いだと思っていた自分が寂しかったのだという結論は、気付いてしまえばもう確実で疑いようもなく、セツナやピネといる時の充足感でもう満たされてしまった。
 .&の会に所属する理由がなくなってしまったので、会を抜けようと思う。
 
 とはいえ、次回ももう開催日程が決まっているし、前回ジルドも来なかった状況、さらには裏ピネの神さまにもタイミングをはかれ、と言われていたことを考慮して、突然脱会するのではなく次の会を最後にしようと決めた。
 今のところ、グリムの器のおかげとはいえ作家という職業での収入が多少はあって生活には困っていない。
 贅沢をできるほどてはないが、初期の頃のようにアルバイトをしなくても食うに困らない程度になった。
 
 セツナやピネとの接点があれば、ドラゴンやジルドとのコミュニケーションは特に必要と感じなくなってきたし、日常の中の非日常という話題もそんなに後髪を引くようなものではなかった。
 グリムの器のもっと詳しい情報に触れる機会としては貴重だけれど、私はそんなにあの不思議なペンにも他の器にも執着はなく、知的好奇心を満たす程度の意味合いしかない。
 それよりは、自らが生み出してしまった不安材料をどう解消してこのあと生きて行くかをちゃんと考えて決めるべきだと思う。
 
 長くてもやもやしていたことが、くっきりとした輪郭を帯びた。
 有体に言えば、とてもすっきりした。
 そんな気持ちだ。
 うきうきすると言ってもいいかもしれない。
 元々の不安であった身元が知れ始めてしまった問題について、まだこれから対処を考えなければいけないので、実は何一つ置かれた状況については変わっていないのだけれど。
 私にしては非常に珍しいことなのだが、浮ついた気持ちである自覚があった。
 
 食料品の買い出しに出ていたのだけれど、一人で例のハンバーグ&ステーキの店に行って、まだ試していないメニューを頼んでみようかな、とふと思いついた。
 軽い足取りで歩いていた。
 
 
 
 「姪浜カナさん、ですね?」