09-34. Another World
グリムの器という不思議な遺物は、私がこれまでに知る世界とはまったく異なる環境を生み出した。
大きいのはやはり人か。
裏ピネ、顕現した神とセツナこと瞬と凛の会話は.&と彼らが呼ぶ何らかの主催の会よりも、さらに刺激的な感覚だった。
瞬と凛は、私より若いが遥かに異質な経験をたくさん積んでいる。
異質への対応が早いし、落ち着いている。
彼らはピネとはまた異なる器のマスタであり、異能の使い手だ。
おそらく、私は一時の拠り所であり、マスタではなかったのだろう。
特異な能力を使えた自覚はなかった。
しかし、そうなると凛が炎を操れるように、瞬にも何らかの能力がある。
ピネはどうだろう。
マスタという位置付けの定義がわからないが、少なくとも私よりは明確に例の神の主人として認識されている。
あの神を使役する、いや、それもニュアンスが正しくないが、顕現させることが能力なのだろうか。
器に宿る意識をピネの肉体に憑依させる能力。
一般常識で図れないことが世の中にはまだまだあるのだなと改めて思う。
なにかこう、運命めいたものというか、そもそも私にとっての事の始まりは、ふと私のもとに現れた喋るペンの存在だったわけだが、そこからここまでの一連の不思議な出来事は結局繋がっている。
導かれている、と一瞬思った。
私は選ばれたのだろうか?
偶然?
必然だとしたら何のために?
どうして私なのだろう。
何を求められているのだろう。