08-30. Silent Room
大満足の食事を済ませて四人で移動した。
ピネの器の発現、カナメの言葉を借りれば憑依について、僕たちに共有したいということだった。
共有とはどういう意味か、ピンと来なかったのだけれど。
場所はカナメの作業場兼自宅に、お言葉に甘えてお邪魔することにした。
作業机はこれがモノ書きかと思うほどに様々な物が散在しているにも関わらず、部屋自体は整理が行き届いていてキレイだ。
生活感はあったが、人を招くための場ではない。
あくまでもカナメのための場であることを感じることができた。
おそらく八畳ほどの広さの部屋だと思う。
四人で居ても窮屈には感じないほどの広さで天井もそこそこ高く、軽くジャンプして手が届くか届かないかぐらい。
作業机とは別に食卓と思われる机があった。
ちょうど四脚椅子があり、僕と凛が手前、カナメとピネが奥に腰掛けた。
机の上には、剣が置いてある。
…剣。
このご時世に包丁やナイフ以外の刃物を目にする機会は少なく、この剣の存在が場の雰囲気を異質なものにしている。
飾り付けがしてあるので、実用向けの品ではないのかと思ったのだが、ピネが静かに水平に剣を抜いた際、ギャリィィィンという金属音と共に姿を現した刀身部分は鋭く、振り下ろせば何でも切れるのではないかと感じるほどであった。
ゆっくりと刀身はその切っ先を天井に向けるように立てられ、ピネが神秘的な表情から恍惚感を漂わせつつ目を閉じた。
うっすらと光っていたその柔らかい光がすっと剣に収束すると、ピネの雰囲気が変わった。
「あら、先日以来ね。元気?」