Grim Saga Project

07-23. 2XXX.07H03

 
 
 
 「さっきも言った通り、オレはグリムの器のことは聞いたことがあるが、見たこともなけりゃ触ったこともない。むしろ興味があるよ。この会の主旨にもピッタリじゃないか。」
 
 「たしかにね。ドラゴン、グリムの器の話はこれまでこの場で話されたことはないの?」
 
 「ああ、ない。オレも知ってはいたけれど、それ絡みの話は知らないしね。」
 
 「ふうむ。それじゃあカナメは?」
 
 「うーん。せっかくグリムの器の話が出たから話しておこうと思う。私はグリムの器を所持していた。」
 
 「していた?」
 
 「ああ。過去形だよ。今はもう持っていない。」
 
 「ほう。詳しく聞いても?」
 
 「その前に、ピネはグリムの器を知らないと言っていたので、簡単に説明しておこうと思う。いいかな?」
 
 「ああ、もちろんだ。」
 
 「うん、僕も賛成。むしろよくわからないことが多いから、グリムの器のことを知る人の話は聞いておきたいと思ってこの話をしたしね。」
 
 「あ、あの、あ、ありがと、カナメさん。」
 
 「いやいや。私がグリムの器を所持していた話を他者にするのは初めてだ。緊張するね。まず、グリムの器というのは、単体ではないらしい。一つではない、という意味。複数存在するようなんだけれど、どうもなんとなくイメージするよりは多数あるようだよ。数個とか数十個とかではなく、もっと。精確な数は知らないけれど。偶然その一つを一時的に所持していたことがある、ということなんだと理解している。その名の所以は、昔存在したグリムという名の血縁が打ったものだからだそうだ。どれぐらい昔なのかは知らない。そのグリムの一族が生み出した様々なモノがグリムの器として現存している。時代的な背景のせいなのかはわからないけど、武具の形をしたものが多いそうだよ。そうではないものもあるようだけれど。で、それらの器は持ち主と対話できるという。私が器を所持していた、と断言しているのは明らかに無機物のはずのものと対話していた時期があるからなんだ。はじめは夢か幻でも見るようになってしまったのかと思ったんだけど、あまりにも現実にハッキリと起きるから、色々調べた結果がこの知識。グリムの器に決定的な見分けるための印なんかはないようだね。対話以外の特徴として、その個体ごとに異なるようではあるんだけれど、特殊な能力を有していて、持ち主はその能力を使えるようになると言う。能力は様々らしいんだけど、そもそもグリムの器には人間でいう記憶を司る不思議な力があるんだそうだよ。私はごく短い時間、器と共に過ごした時間があったんだけど、その結果が例の作品なんだ。"次代の先駆"と"センチメンタルフューチャ"。確証はないけど、印象としては、その器は私にこれらの作品を書かせるために私のもとにやってきたのではないか、って感じで捉えている。」