Grim Saga Project

07-22. 2XXX.07H02

 
 
 
 「という事件が僕が通っていた大学でありました。あまり未だに実感は湧いていないけれど、人が亡くなって、逮捕されて、という事実があるので、今はもう現実に起きたことなのだな、という感覚には至っている感じ。」
 
 「なるほど。ジルドはその事件について教えて欲しいと言ってきた、と。」
 
 「ええ。続けざまになっちゃうけど、このままもう一つお話してもいいですかね?」
 
 「オレは構わないよ。カナメとピネは?」
 
 「私はもちろん問題ないよ。」
 
 「あ、わわ私も、だい、……大丈夫、です。」
 
 「ありがとう。それじゃあ引き続き。ジルドが訪ねてきて、事件について教えて欲しい、って話でお茶をしに行った。そこで、グリムの器という不思議なものに関するお話を聞きました。誰か知ってる?」
 
 
 
 すっと静かな時間が流れる。
 急に話を振られた三人はどうするか考えたのだろう。
 その時点で僕は、これはみんな知っている、と確信した。
 ピネだけは反応からは確証は得られないけど、普段快活なドラゴンとカナメはここで逡巡したことで、知っていると薄情したようなものだ。
 
 
 
 「ああ、びっくりした。急にグリムの器の話が出たもので。私は知っているよ。ドラゴンとピネは?」
 
 「オレもだ。知っている。とはいえ、見たことも触ったこともなくて、噂を聞いたことがあるだけだけどね。」
 
 「あ、あの私、…よく、…わかりません。」
 
 「そうか。試すような聞き方になっちゃったかな。申し訳ない。オカルトのような話だったから、どれぐらい一般的に浸透しているものなのかわからなくて。誰も知らないかなと思ってたので意外だった。」
 
 「セツナ、ジルドは事件の話を聞きに来たのだろう?なのになぜそんな噂話を始めたんだ?」
 
 「それは僕にもわからないよ。むしろ僕が聞きたいぐらい。最初は事件について話をしていたんだ。その中で不審な点というか常識で計れない、まさにこの会の議題みたいな要素はなかったかって感じの話をしていたんだけど、グリムの器が絡んでないかを探ってるんだ、って教えてくれた。多分便利屋稼業の依頼なんだろうけど、グリムの器というワードは守秘義務に抵触するポイントじゃなかったんじゃないかな、って印象だった。曖昧な聞き方をしてもなかなか尻尾が掴めないから、みたいな感じ。」
 
 「そ、そのお話って、ジルドさんが、こ、来なく、なってしまった、…ことになにか、関係あるんでしょうか……。」
 
 「うーん、僕はさすがにわからないけど、たしかに可能性はあるのかもしれない。」
 
 「これでジルドの身に何かがあったらセツナは下手をすると疑われるような立場かもね。…いや、冗談だ。だったらわざわざこんな話をここでする必要はない。」
 
 「ところでドラゴンとカナメは、グリムの器についてはどの程度知っているの?僕は詳しくわからないので、わかる範囲でいいから聞きたいんだけど。」